著者
中村 牧子 上野 博志 中垣内 昌樹 堀 正和 田中 修平 城宝 秀司 絹川 弘一郎
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.611-618, 2019-06-15 (Released:2020-08-17)
参考文献数
12

症例は58歳男性,主訴は心窩部痛・心肺停止.2018年某月初旬,心窩部痛・嘔吐にて救急要請した.救急車内で心室細動(VF)となりAEDによる除細動が3回施行されるもVF停止せず,心肺蘇生が継続され当院ERへ救急搬送された.気管挿管,アドレナリン,アミオダロン投与後も自己心拍再開が得られず,VA-ECMOを挿入し冠動脈造影(CAG)を施行.左前下行枝#6 100%,右冠動脈#1-2 90%を認め,引き続き#6にPCI施行,その後の除細動で洞調律へ復帰した.#1-2にもPCIを施行しTIMI 3となったが左室拡張末期圧20 mmHgと高値のため左室ベント目的にIMEPLLA 2.5を挿入した.CCU入室時脈拍触知せず,胸部X線で肺うっ血あり,心エコーで大動脈弁の開放を認めず,高度のびまん性左室壁運動低下(EF 10%)を認めた.低用量の静注強心薬も併用開始し第2病日ECMOを離脱した.CPKは最高17737 IU/L,CK-MB 702 ng/mLまで上昇したが,左室壁運動の改善を認め,第5病日IMPELLAを抜去,第6病日人工呼吸器と静注強心薬を離脱した.第14病日の心エコーではEF 47%に改善を認め,神経学的後遺症なく第31病日に独歩退院し,退院1カ月後に就労復帰した.本例はECMOによる全身循環の維持,PCIによる冠血行再建とIMPELLAによる左室減負荷により心機能が回復し救命し得たと考えられた.