著者
保 聖子 藤田 聡 緒方 由美 木村 郁夫
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.103-110, 2018 (Released:2018-01-19)
参考文献数
14
被引用文献数
1

シラス(イワシ類稚仔魚)の冷蔵保存中に発生する自己消化について,魚体プロテアーゼ活性の経時変化やプロテアーゼの種類および漁獲時の魚体にかかる圧の影響を測定した。モデル試験で魚体に圧力を加えると冷蔵保存中の自己消化が促進した。また,冷蔵保存中には保存温度に依存してプロテアーゼ活性の上昇がみられ,その原因としてセリンプロテアーゼ(主にキモトリプシン)の酵素活性値が高くなることをプロテアーゼ阻害スペクトルから明らかにした。卵白はシラス魚体溶解の原因プロテアーゼに対して強い阻害効果を示した。
著者
緒方 由美 進藤 穣 木村 郁夫
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.461-467, 2012 (Released:2012-06-15)
参考文献数
19
被引用文献数
5 15

高鮮度水産物を凍結処理した場合,その品質は非常に良い状態で保たれる。しかしながら,高鮮度水産物で凍結耐性が高いことに関する科学的な研究はほとんど行われていない。本研究では高鮮度魚肉中に存在する ATP に着目し,ATP の筋肉タンパク質冷凍変性に及ぼす作用について検討した。ATP 濃度を維持できる筋原線維溶液モデル系を構築し,各濃度の ATP 存在下での冷凍変性速度を測定した結果,ATP による筋原線維タンパク質の冷凍変性抑制効果を確認した。その効果は,ATP 濃度と凍結貯蔵温度に依存し魚種差を示した。