著者
緒方 由美 進藤 穣 木村 郁夫
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.461-467, 2012 (Released:2012-06-15)
参考文献数
19
被引用文献数
5 15

高鮮度水産物を凍結処理した場合,その品質は非常に良い状態で保たれる。しかしながら,高鮮度水産物で凍結耐性が高いことに関する科学的な研究はほとんど行われていない。本研究では高鮮度魚肉中に存在する ATP に着目し,ATP の筋肉タンパク質冷凍変性に及ぼす作用について検討した。ATP 濃度を維持できる筋原線維溶液モデル系を構築し,各濃度の ATP 存在下での冷凍変性速度を測定した結果,ATP による筋原線維タンパク質の冷凍変性抑制効果を確認した。その効果は,ATP 濃度と凍結貯蔵温度に依存し魚種差を示した。
著者
進藤 穣 上新 学 御木 英昌
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.726-730, 2000-07-15
被引用文献数
1

魚肉すり身の低温脱水過程で, 魚肉タンパク質の変性による魚肉の平衡含水率の低下が想定される。そこで, 脱水特性曲線より得られる限界含水率(Wc)を指標に, 低温貯蔵中(0℃)の筋原繊維(Mf)タンパク質の変性とWcとの関係を検討した。減率脱水期間内に変曲点を示す第二限界含水率((Wc)<SUB>2</SUB>)が得られた。(Wc)<SUB>2</SUB>は貯蔵日数の経過とともに低下した。また, (Wc)<SUB>2</SUB>はMf Ca<SUP>2+</SUP>-ATPase全活性およびMf溶解度に対して, それぞれ高い正の相関(r=0.94,0.88)を示した。以上より, (Wc)<SUB>2</SUB>はタンパク質の変性状態を知る指標になり得ると考えられた。