著者
織原 義明 鴨川 仁 長尾 年恭
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

現時点において、「確度の高い地震予知は困難」というのが科学的な見解である。しかし昨今では、民間による地震予知・予測情報が注目を集めている。そのなかには、例えば、国土地理院が観測・公開しているデータを用いていることから、一見すると科学的な手法による予知・予測と思われてしまうものもある。マグニチュード6以上の大きな地震を予測する場合であっても、数多くの警告を発していれば地震を的中させることができるであろう。そして、多くの場合、マスコミは地震を言い当てた事例だけを紹介するため、人々はその地震予知・予測が当たっていると信じてしまうのである。これは人々が誤った判断をしてしまう典型的なケースである。本発表では、巷にあふれる地震予知・予測情報に対して、一般の人々がどのように接すれば正しい判断ができるのか、地震予知・予測情報そのものと、それを宣伝するメディアの2つのリテラシーについて議論する。
著者
織原 義明
出版者
おりはらよしあき事務所
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

研究の目的)平成20年度科学研究費補助金(奨励研究)による地震予知意識調査で、山形県内の8割以上の中高生が地震前の動物異常行動を少なからず信じていることなどが明らかとなった。本研究では、地震前の動物異常行動などの宏観異常現象を人はなぜ信じるのか、その理由を探る。また、東日本大震災前の宏観異常現象について、三陸海岸における現地調査で証言を得る。さらに、教員を目指す大学生を対象に宏観異常現象や疑似科学に対する意識を調査し、その傾向を明らかにする。研究方法)インターネット上で宏観異常現象(動物異常行動・地震雲・電気製品の異常)に関して、なぜそれを信じるのかを尋ねるアンケート調査を実施した。三陸海岸では、東日本大震災前の宏観異常現象に関する聞き取り調査を実施した。また、教員を目指す大学生を対象に、宏観異常現象や疑似科学に対する意識についてアンケート調査を実施した。研究成果)インターネットによる調査では、動物異常行動・地震雲・電気製品の異常、いずれにおいても「必ずある」と答えた回答者は「あるかもしれない」の回答者より、自らの体験でそれを信じる傾向にあることなどがわかった。また、この3つのなかでは、動物異常行動を信じる割合が最も高く、次いで地震雲、電気製品の異常となった。この傾向は山形県の中高生調査の結果と同じであった。三陸海岸での聞き取り調査では、大船渡市におけるカラスの異常行動の証言や、昭和三陸大津波で異常があったと報告されている井戸で、東日本大震災の前に水位が下がっていた可能性などが明らかとなった。教員を目指す大学生へのアンケート調査では、心霊現象・超能力・血液型占いのいずれについても、肯定的に捉える学生より否定的に捉える学生が多かった。しかし、地震前の動物異常行動を少なからず信じる割合は8割以上であった。