著者
平木場 浩二 丸山 敦夫 美坂 幸治
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.69-77, 1990-02-01 (Released:2010-12-10)
参考文献数
31
被引用文献数
4 4

本研究の目的は, CO2過剰排出量 (CO2excess) と持久性能力の関連性を明らかにするために, 長距離走者と一般人の乳酸蓄積の結果生じるCO2excessを比較するとともに, CO2excessと持久性パフォーマンスとの関係について検討することであった.18才から22才の男子長距離走者6名 (LDR群) および21才から24才の健康な一般成人男子4名 (CON群) を対象とし, 自転車エルゴメーターでの負荷漸増法による最大下および最大運動テストと12分間全力走を実施して, それらの運動テストで得られたVO2max, VO2AT, CO2excessおよび12分間全力走パフォーマンスとの関係を検討した.本研究で得られた結果の要約は以下の通りである.1) CO2excess (ml) は, LDR群3, 442±677ml, CON群2, 677±437mlの値であったが, 両群間に有意な差はなかった.体重当りに換算したCO2excess/w (ml・kg-1) は, CON群 (40.3±3.54) と比較して, LDR群 (59.1±9.07) が有意に高い値を示した (p<0.01) .2) ΔLA (安静から運動直後1分目までの血中LAの増加分) に対するCO2excess/wの比率 (CO2excess/w/ΔLA) は, LDR群 (5.59±1.16ml・kg-1・mmol-1) がCON群 (4.46±0.69ml・kg-1・mmol-1) より高値を示す傾向にはあったが, 両群間に有意な差は認められなかった.3) CO2excess (ml) は, VO2maxとは有意に相関しなかったが, VO2ATとは有意に相関していた (r=0.763, p<0.05) .体重当りに換算したCO2excess/w (ml・kg-1) とVO2maxおよびVO2ATとの間にはそれぞれr=0.822 (p<0.01) , r=0.892 (p<0.001) の高い有意の相関係数が認められ, 体重当りのCO2excess (ml・kg-1) と持久性能力との間に関連性のあることが確認された.さらに, ΔHCO3- (安静から運動直後1分目までの血中HCO3-の減少分) とも有意の相関関係が認められた (r=0.649, p<0.05) .4) 持久性パフォーマンスの指標として採用した12分間全力走の走行距離とCO2excess (ml) およびCO2excess/w (ml・kg-1) との間にはそれぞれr=0.715 (p<0.05) , r=0.933 (p<0.001) の有意な相関関係が得られ, CO2excessの相対値 (ml・kg-1) の方が持久性パフォーマンスと密接に関連することが認められた.また, CO2excess/w/ΔLAの比率との間にも有意な相関のあることが示された (r=0.671, p<0.05) .5) 以上の結果から, 体重当りのCO2excess (ml・kg-1) およびCO2excess/w/ΔLAの比率には持久性能力と関連性があり, 乳酸蓄積を伴う比較的高強度の身体活動の維持が要求される持久性競技 (例えば, 3, 000~5, 000M走) のパフオーマンスを評価する上で重要な因子となることが示唆された.