著者
松尾 龍二 美藤 純弘 松島 あゆみ
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.141, no.6, pp.306-309, 2013 (Released:2013-06-10)
参考文献数
11

上唾液核は顎下腺・舌下腺を支配する副交感神経系の中枢である.ラットの脳スライス標本を用いた電気生理学的実験により,上唾液核ニューロンは興奮性と抑制性のシナプス入力を受けていることが示されている.その主な受容体は興奮性がグルタミン酸受容体とムスカリン性アセチルコリン受容体,抑制性がGABA受容体とグリシン受容体である.免疫組織化学的にもこれらの受容体が検出された.一方,蛍光色素の軸索輸送を利用した組織学的検索により,上唾液核に入力する主な神経群は脳幹部の網様体,結合腕傍核,孤束核,および上位脳の視床下部外側野,扁桃体中心核,室傍核などである.これらの部位は上唾液核に直接入力すると考えられる.これらの神経核群の中で,抑制性GABAニューロンは主に脳幹部の網様体に存在し,前脳の扁桃体中心核や視床下部外側野にも検出された.これらの所見は,唾液分泌が食欲(摂食中枢としての視床下部外側野)や食の嗜好性(扁桃体中心核)を反映することを示唆している.さらに上唾液核へのコリン作動性入力の起始核として,脚橋被蓋核や背側被蓋核が上記の軸索輸送の実験で認められている.これらの部位は網様体賦活系と関連しており,覚醒やレム睡眠の維持などに重要である.精神ストレスは,食欲,情動,睡眠に影響することがよく知られており,これらの上位中枢の変化は唾液分泌にも変調を来すと考えられる.
著者
美藤 純弘 藤井 昭仁 舩橋 誠 小橋 基 松尾 龍二
出版者
日本生理学会
雑誌
日本生理学会大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.236-236, 2007

We showed the glutamatergic, GABAergic and glycinergic synaptic inputs to superior salivatory (SS) neurons which is the primary center of submandibular salivary secretion. This glutamatergic input is considered to derive from the forebrain and brainstem. In the present study, we studied how SS neurons receive the glutamatergic inputs from the forebrain and brainstem in rats. The SS neurons innervating the salivary glands were labeled by retrograde axonal transport of a fluorescent dye. Subsequently some rats were decerebrate. Whole-cell patch-clamp recordings were performed from the labeled cells in slices. Excitatory postsynaptic currents were evoked by electrical stimulation near the recording cell. As compared with normal SS neurons, decerebrate SS neurons showed 3 types of the responses: enhanced responses, similar responses, no responses. The SS neurons which showed enhanced EPSCs receive the excitatory inputs from forebrain and brainstem. Decerebration induced denervation-hypersensitivity in the glutamate receptors. Enhanced EPSCs may be evoked by stimulation of glutamatergic inputs from brainstem. The SS neurons displayed similar responses have mainly excitatory inputs from the brainstem. The SS neurons which displayed no responses produced larger currents by the application of glutamate, suggesting that this type has excitatory inputs exclusively from the forebrain. <b>[J Physiol Sci. 2007;57 Suppl:S236]</b>
著者
松尾 龍二 美藤 純弘 松島 あゆみ
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理學雜誌 = Folia pharmacologica Japonica (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.141, no.6, pp.306-309, 2013-06-01
参考文献数
10

上唾液核は顎下腺・舌下腺を支配する副交感神経系の中枢である.ラットの脳スライス標本を用いた電気生理学的実験により,上唾液核ニューロンは興奮性と抑制性のシナプス入力を受けていることが示されている.その主な受容体は興奮性がグルタミン酸受容体とムスカリン性アセチルコリン受容体,抑制性がGABA受容体とグリシン受容体である.免疫組織化学的にもこれらの受容体が検出された.一方,蛍光色素の軸索輸送を利用した組織学的検索により,上唾液核に入力する主な神経群は脳幹部の網様体,結合腕傍核,孤束核,および上位脳の視床下部外側野,扁桃体中心核,室傍核などである.これらの部位は上唾液核に直接入力すると考えられる.これらの神経核群の中で,抑制性GABAニューロンは主に脳幹部の網様体に存在し,前脳の扁桃体中心核や視床下部外側野にも検出された.これらの所見は,唾液分泌が食欲(摂食中枢としての視床下部外側野)や食の嗜好性(扁桃体中心核)を反映することを示唆している.さらに上唾液核へのコリン作動性入力の起始核として,脚橋被蓋核や背側被蓋核が上記の軸索輸送の実験で認められている.これらの部位は網様体賦活系と関連しており,覚醒やレム睡眠の維持などに重要である.精神ストレスは,食欲,情動,睡眠に影響することがよく知られており,これらの上位中枢の変化は唾液分泌にも変調を来すと考えられる.