- 著者
-
肥田野 登
中川 大
- 出版者
- 東京工業大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1986
本研究は大都市の都心部において郊外鉄道を直通運転した場合の効果を把握し, その効果の帰属について関連する主体別に明らかにすることを目的としている. 筆者らは郊外鉄道, 道路及び公園などのインフラストラクチャー整備に伴う効果を十全にかつ二重計算なく捉える方法として土地資産価値に注目して分析を進めてきた. 本研究はその一環として従来十分明らかにされてこかった都心部での交通プロジェクトをとりあげたものである.そのため, まず都心部での主体との関連性を明確にした. そのけっか, 既成市街地内においては土地利用変化や地代上昇に対しての既得権者の抵抗があり, 必ずしも便益が地価に転移しない可能性が示された.またこれらの効果を定量的に計測するために土地利用予測モデルを構築した. 都心部での鉄道サービス向上に伴う土地利用変化をきめ細かく把握する実用的なモデルは現在のところ存在しない. そこでここでは東京の新玉川線, 小田急線の半蔵門及び千代田線乗り入れを対象としてとりあげ, 新たに商業集積地区を単位とし, かつ地区間の複合条件をとり入れた集計型ロジットモデルを作成することとした. モデルは小売, サービスその他事業所(3次のみ)ごとに推定し, 概ね妥当な結果を得た. 説明要因の中では後背地のポテンシャルに係わるものが最も説明力が大きなものとなっている. 又モデルによる現況再現性も高い. 次にこのモデルを中心として関連する土地所有者, 事業所, 鉄道事業者, 自治体ごとの便益と費用を計測するための影響分析のサブモデル及び地価関数を推定した. 又事業者の地代についてはヒアリングから得られた値を用いた. その結果これらの郊外鉄道の都心部への乗り入れは土地資産価値で8700億円の上昇をもたらし, 又事業所, 港区にも便益が帰属することが判明した.