- 著者
-
中野 雄介
脇本 将寛
小林 隆史
鈴木 健二
- 出版者
- 一般社団法人 日本心臓血管麻酔学会
- 雑誌
- Cardiovascular Anesthesia (ISSN:13429132)
- 巻号頁・発行日
- vol.24, no.1, pp.111-117, 2020-08-01 (Released:2020-09-10)
- 参考文献数
- 11
症例は63歳の男性,身長165 cm,体重55 kg。大動脈弁閉鎖不全症・僧帽弁閉鎖不全症の再燃に対し手術が予定された。麻酔導入後,完全房室ブロックと血圧低下を来たし,一時胸骨圧迫を要した。気道内圧の上昇と全身性の紅斑を認め,アナフィラキシーショックと診断した。経食道心エコーで全周性の壁運動低下,肺動脈圧の上昇を認めたため,冠攣縮を疑い硝酸薬を投与した。その後速やかに肺動脈圧の低下と心収縮能の改善が得られ,血行動態は安定した。アナフィラキシーまたは急性冠症候群の徴候を認めた際には常にKounis症候群の可能性の考慮と,状況に応じた速やかな治療が求められる。