- 著者
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膽吹 覚
- 出版者
- 福井大学
- 雑誌
- 福井大学留学生センター紀要 (ISSN:18805876)
- 巻号頁・発行日
- vol.2, pp.11-19, 2007-03-01
『いちげんさん』の「僕」と『彗星物語』のボラージュは、その留学目的と卒業後の進路において、前者は<遊牧民的留学生>として、後者は<海亀的留学生>として対照的に描かれている。その背景を探ると、<遊牧民的留学生>には作者ゾペディ自身が投影されていることが考えられ、一方の<海亀的留学生>には日本人作家が描く外国人留学生像のひとつの典型を看取ることができるようである。このように「僕」とボラージュは、対照的なイメージで描かれているにもかかわらず、両者はともに、身近な動物とのコミュニケーションによって、留学にともなって生じたカルチャー・ショックを解消・克服しようとしている姿が描かれていた。そこに、<遊牧民的留学生><海亀的留学生>の区別を超えて、両者の根底に、対人コミュニケーションでは支えきれない苦悩や孤独感を抱えた外国人留学生像を看取ることができるようである。