著者
赤塚 美月 中川 真紀 臼井 千惠 林 孝雄
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.45-49, 2020 (Released:2021-02-06)
参考文献数
15
被引用文献数
1

【目的】急性内斜視を相次いで発症した2兄弟を報告する。【症例】兄弟1(一卵性双生児)兄:16歳発症。25⊿ET。1年前から近距離でスマートフォン(以下スマホ)使用。兄弟1弟:18歳発症(大学受験勉強中)。40⊿ET。兄弟2兄:15歳発症(高校受験勉強中)。60⊿ET。兄弟2弟:13歳発症。65⊿ET。1年前から近距離でスマホ使用。屈折異常は兄弟1正視、兄弟2近視。全例で遠・近見での眼位差なし。【結論】兄弟1兄と兄弟2弟は近距離のスマホ使用が、兄弟1弟と兄弟2兄は受験勉強(近業)が急性内斜視の発症誘因となった可能性があり、共通する遺伝要素を持つ兄弟でも発症に環境要因が影響することが示唆された。
著者
佐々木 翔 林 孝雄 金子 博行 佐々木 梢 臼井 千惠
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.51-56, 2015 (Released:2016-03-19)
参考文献数
8

【目的】斜視手術中に測定が可能な新しい回旋偏位測定装置「Cyclophorometer」を開発し、麻痺性斜視に対して術中に回旋偏位を測定した。斜視手術中に回旋偏位の測定を行う意義、および術後の経過について検討したので報告する。【対象・方法】回旋複視を自覚する斜視患者7例(男性3例、女性4例、平均年齢57.6歳)を対象とした。斜視の内訳は片眼上斜筋麻痺3例、片眼上直筋麻痺1例、片眼動眼神経麻痺1例、球後麻酔後の眼球運動障害1例、原因不明1例であった。各症例に対し、斜視手術前、術中、術終了時、術後10日目、術後3か月目に本装置を用いた回旋偏位の測定を実施した。【結果】斜視手術前の眼位は全例が外方回旋(Ex8°~Ex18°)を示し、平均Ex10.9°±3.8°であった。手術は局所麻酔下で術中に残余回旋斜視角を確認しながら行い、7例中3例において術中の回旋偏位測定結果を元に術量を変更した。手術終了時の回旋偏位は平均Ex1.3°±2.0°で、手術後10日目の回旋偏位は平均Ex2.7°±2.4°、手術後3か月後では平均Ex3.1°±2.3°であった。手術前は全例で複視を認めたが、術直後と術後10日目では全例が消失し、術後3か月でも7例中6例が複視消失の状態を維持した。【結論】本装置を用いて斜視手術中に回旋偏位の測定を行うことで、その場で術式の変更や追加の判断をすることが容易となった。本装置の術中利用は、手術回数を最小限にとどめ、術後の良好な眼位を保つために有効であると思われた。