著者
富田 幸代 亀山 敦史 渡邉 直子 牧野 麻子 高山 沙織 細井 隆太郎 勢島 典 中西 万理子 色川 大輔 石井 善仁 杉山 利子 齋藤 淳 角田 正健
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.15-23, 2013-03-28 (Released:2014-04-10)
参考文献数
22
被引用文献数
2 1

本研究では,口臭外来を受診した患者の実態,口臭質問票の回答および客観的評価である臭気測定器(オーラルクロマTM)による口臭診断との関連性を分析し,心理的口臭症患者の不安障害の傾向を捉えることができるか検討することを目的とした。対象者は,2009 年 1 月から 2011 年 12 月までに東京歯科大学千葉病院口臭外来を受診した患者 363 名とした。口臭質問票の項目の一部(性別,年齢,口臭の自覚の有無,口臭を意識した時期,口臭を意識するようになった契機,口臭による社会生活や家庭生活への影響,口臭について相談できる人の有無)とオーラルクロマTMによる検査結果の関連性を分析した。臭気測定器による分析は,臭気物質の中で口臭の強弱と強い相関が認められるCH3SH 濃度を指標とし,対象者を臭気レベルを下げるための治療が必要か否かにより,口臭なし群と口臭あり群に分けた。その結果,対象者のうち口臭を自覚する者は 8 割を超えていたが,そのうち約半数は口臭なしと診断され,口臭の自覚と口臭の有無との明確な関連性は認められなかった。口臭の診断,治療には心理的側面も含めた様々な面からのアプローチが必要であると思われた。特に心理的口臭症患者への対応では,エゴグラム等の分析を待たずに,口臭質問票の一部の項目と口臭測定結果から,不安障害を有する患者の傾向をある程度捉えることが可能であると考えられた。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)55(1):15-23, 2013
著者
渡辺 厚 毛利 環 渡邉 直子 渡邉 洋平 宮崎 秀夫 齋藤 功
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13490303)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.142-154, 2009-10-25
参考文献数
43
被引用文献数
2

わが国の不正咬合の疫学調査は独自の基準によるものが散見されるのみで,国際的に比較可能なIndex of Orthodontic Treatment Need(IOTN)を用いた疫学調査はほとんどない.そこで今回,日本人における不正咬合の種類と程度および矯正治療の必要性に関する基礎データの構築を目的に,IOTNを用いた疫学調査を行った.調査対象は,4つの地域の11歳から14歳児,497名としたが,矯正治療経験のある72名(14.5%)は除外した.調査は,レントゲン,研究用模型を利用せず口腔内診査法によりIOTNを算出した.機能と形態の両面から咬合を評価するDHCにおいて「矯正治療必要性あり」(DHC Grade 4,5)と判定された者は34.1%であった.不正咬合の内訳は,叢生17.4%,過度のoverjet 10.1%,萌出余地不足13.2%,永久歯欠損4.0%,過蓋咬合2.6%,交叉咬合2.4%,開咬0%,反対咬合0%であった.一方,客観的審美性の観点から咬合を評価するACにて「矯正治療必要性あり」(AC Grade 8-10)に分類された者は10.4%であった.これらの結果を総合すると,「矯正治療必要性あり」と分類された者は35.5%であった.以上の結果をこれまでの報告と比較すると,矯正治療が必要とされる者の割合は英国の調査結果とほぼ近似していたが,不正咬合の種類としては叢生が約2倍で,不正咬合の特徴は欧州と異なる可能性が示唆された.