著者
岸田 佐智 富安 俊子 芝崎 恵 佐原 玉恵
出版者
徳島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本年度は、研究分担者及び不妊症看護認定看護師の協力を得て、不妊治療を受けている女性8名に対する半構成的インタビューを行った。インタビュー内容は、不妊治療中の身体的苦痛や不快、治療継続における悩み、パートナーや周囲からのストレス、生活上の問題、医療者への不満や、傷つけられた出来事、満足していることなどについてであり、1-2時間の面接を行った。インタビュー中は、MDレコーダーにてその内容を録音し、録音内容を逐語文にし、討議内容のメモも用いて、看護者が捉えている不妊治療中の問題点について質的に抽出を行った。昨年度の成果と合わせて、不妊治療における身体心理社会的側面の問題、(1)継続して行われる注射の方法(部位・角度、注入時間、(2)注射後の圧迫など)に関する問題、(3)治療に伴う副作用の無自覚や我慢、(4)人為的に作られた月経の辛さ、(5)不妊であることを認めたくない、(6)不妊であることや治療後に生じる喪失感、(7)妊娠を素直に喜べない、(8)繰り返し体験する痛みや恐怖からくる継続的緊張感、(9)治療の複雑さによる理解不足、(10)周囲との関係を控えようとする孤立化、(11)余儀なく変更されるライフスタイル、(12)経済的問題、(13)不妊である自分が理解されない、(14)血縁を存続させるための周囲からの圧力、(15)治療に伴う命の選択、妊娠するための治療を最優先する、(16)治療継続によりセックスレスな夫婦の関係、(17)不妊原因や治療失敗により生じる夫婦の軋轢、が明らかになった。そこから、不妊カップルへの包括的な看護援助を提供するため3つのケアモデル、(1)より効果的で、より痛みの少ない不妊治療に伴う注射方法を探索すること、(2)治療に伴う、苦痛への緩和方法としてホメオパチーを活用し、その軽減を図ること、(3)治療の内容や方法に関する理解を深め、治療や看護を連続的に提供できるようにするための治療計画手帳の作成をすることの必要性を見出した。