著者
松枝 睦美 岸田 佐智 益守 かづき 山本 あい子 新道 幸恵 嶋岡 暢希 増井 耐子
出版者
高知女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、妊婦が体験しているマイナートラブル(以下MTとする)に対する看護援助を開発することを目的として、平成11年度および12年度は文献検討を、また平成12年度から13年を中心に妊婦や助産師へのインタビューを、14年度はオーストリア・ウィーンでのマイナートラブルに関すると助産師へのインタビュー、さらにそれらの結果を基にして、作成した質問紙により、妊婦と助産師にアンケート調査をした。以上より、妊婦は当初考えていたより多くのMTの症状を抱えており、それに対する適切な対応方法も見つけられていなかった。そして、助産師に対して少しでもいいからMTに関する自分たちの訴えに耳を傾けてほしいという希望を持っていた。一方、助産師のMTに対する看護援助活動の問題として、MTを抱えている妊婦との関わりが短いためにその問題を充分に引き出せていないこと、たとえ援助が実施できても継続して関われず、自分のケアを振り返ることができないため、ケアの効果が充分に確認できていないこと、対処法が確立できていないMTが多いこと、症状のアセスメントが適切でない場合は異常を引き起こすことなど、が挙げられた。従って、妊婦に対するMTの看護援助として、傾聴し共感する姿勢をもつこと、妊娠によって生じる生理的現象の説明を行うこと、抱えている症状アセスメントを適切に行うこと、個別性(文化や時代背景も含めた)の違いを理解し尊重すること、妊娠週数による今後起こりうる問題の予測を行うこと、他職種との連携を密にすること、外来でのMTに対応できるためのシステム、例えばMTに関するパンフレットの作成や、仲間同士の交流の場の設定、助産師外来の常設等、を作ることが考えられた。今後は、各々の症状に対する原因の究明、およびそれへの具体的援助活動の開発が求められ、妊婦にとってより快適な妊娠期間となるような援助がさらに必要である。
著者
中野 沙織 岩佐 幸恵 岸田 佐智
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.2_283-2_296, 2022-07-20 (Released:2022-07-20)
参考文献数
26

目的:ベテラン看護師が獲得した働き続ける上での「心の強さ」の構造を明らかにする。方法:勤続年数20年以上の看護師9名に半構造化面接を行い,データを木下のM-GTAで分析した。結果:「心の強さ」には,周りに追いつくための努力ができる力,失敗を繰り返さないように努力ができる力,ポジティブな思考ができる力,自分の気持ちを調整する力,自分に合った方法で心身の健康管理ができる力,良い人間関係を構築する力,看護師としての責任を果たそうとする力,より良い看護を目指し自分ができる看護を探求する力,自分に合う働き方を選択する力があった。彼らは就業前より周りに追いつくための努力ができる力を獲得しており,その力は他の全ての「心の強さ」の獲得に影響し,職業を継続する中で維持・強化されていた。結論:看護師の職業継続には,周りに追いつくための努力ができる力を維持・強化する支援的な職場環境が重要であると示唆された。
著者
岸田 佐智 富安 俊子 芝崎 恵 佐原 玉恵
出版者
徳島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本年度は、研究分担者及び不妊症看護認定看護師の協力を得て、不妊治療を受けている女性8名に対する半構成的インタビューを行った。インタビュー内容は、不妊治療中の身体的苦痛や不快、治療継続における悩み、パートナーや周囲からのストレス、生活上の問題、医療者への不満や、傷つけられた出来事、満足していることなどについてであり、1-2時間の面接を行った。インタビュー中は、MDレコーダーにてその内容を録音し、録音内容を逐語文にし、討議内容のメモも用いて、看護者が捉えている不妊治療中の問題点について質的に抽出を行った。昨年度の成果と合わせて、不妊治療における身体心理社会的側面の問題、(1)継続して行われる注射の方法(部位・角度、注入時間、(2)注射後の圧迫など)に関する問題、(3)治療に伴う副作用の無自覚や我慢、(4)人為的に作られた月経の辛さ、(5)不妊であることを認めたくない、(6)不妊であることや治療後に生じる喪失感、(7)妊娠を素直に喜べない、(8)繰り返し体験する痛みや恐怖からくる継続的緊張感、(9)治療の複雑さによる理解不足、(10)周囲との関係を控えようとする孤立化、(11)余儀なく変更されるライフスタイル、(12)経済的問題、(13)不妊である自分が理解されない、(14)血縁を存続させるための周囲からの圧力、(15)治療に伴う命の選択、妊娠するための治療を最優先する、(16)治療継続によりセックスレスな夫婦の関係、(17)不妊原因や治療失敗により生じる夫婦の軋轢、が明らかになった。そこから、不妊カップルへの包括的な看護援助を提供するため3つのケアモデル、(1)より効果的で、より痛みの少ない不妊治療に伴う注射方法を探索すること、(2)治療に伴う、苦痛への緩和方法としてホメオパチーを活用し、その軽減を図ること、(3)治療の内容や方法に関する理解を深め、治療や看護を連続的に提供できるようにするための治療計画手帳の作成をすることの必要性を見出した。