- 著者
-
堀本 拡伸
高橋 優
久保 俊彦
芦原 俊昭
- 出版者
- 公益財団法人 日本心臓財団
- 雑誌
- 心臓 (ISSN:05864488)
- 巻号頁・発行日
- vol.43, no.3, pp.371-376, 2011 (Released:2012-10-03)
- 参考文献数
- 2
症例は38歳, 男性. 小学生時から労作時や緊張した時を中心に開始と停止の明瞭な動悸を自覚していたが, 30分程で消失するため放置していた. 2009年4月, 軽労作で呼吸困難感が出現し, 2日後には座位でも自覚するようになったため, 近医を受診. 心電図でwide QRS頻拍を指摘され当科に救急搬送された. 当院到着時の心電図はwide QRSで左脚ブロックパターンを呈しており, 毎分200拍程度の頻拍にもかかわらず症状は軽微で血行動態も保たれていた. アデノシン三リン酸(adenosine triphosphate; ATP) 急速静注によりR-R間隔が短縮するとともにnarrow QRSに変化し, 続いて一過性完全房室ブロックを経て正常洞調律に回復した. この経過から, 左側副伝導路を有する房室回帰性頻拍が左脚ブロックによりCoumel現象を生じていたと疑われた. 電気生理学的検査により左側壁の副伝導路を認め, カテーテルアブレーションによる離断とともに誘発不能となり根治したことから, 上記診断が裏づけられた. ATP投与によりCoumel現象が確認でき, 頻拍の機序が房室回帰性頻拍であること, かつブロックを生じた脚と同側に副伝導路が存在することを同時に診断でき, その後の検査, 治療に非常に有用であったwide QRS頻拍の1例を経験した.