著者
木下 こづえ 稲田 早香 荒蒔 祐輔 関 和也 芦田 雅尚 浜 夏樹 大峡 芽 楠 比呂志
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.59-66, 2009-03

飼育下の雌ユキヒョウ(Uncia uncia)と雌チーター(Acinonyx jubatus)における性行動と発情ホルモンの関係を調べる目的で,週に2〜7回の頻度で,同一日に行動観察と採糞を行った。糞中エストロゲン(E)濃度はエンザイムイムノアッセイによって測定し,ユキヒョウでは25項目の行動の回数を,チーターではRollingについてのみ回数を記録した。その結果,ユキヒョウでは,糞中E濃度との間に有意な正の相関関係が見られた行動は,Locomotion(r_s=0.4305, P<0.01),Flehmen(r_s=0.3905, P<0.01),Sniffing(r_s=0.3588, P<0.01),Rubbing(r_s=0.2988, P<0.01),Lordosis(r_s=0.2621, P<0.01),Pace(r_s=0.2335, P<0.01),Rolling(r_s=0.2285, P<0.01),Prusten(r_s=0.2216, P<0.01),Spraying(r_s=0.1876, P<0.01),Pursuing(r_s=0.1793, P<0.01),Attacking(r_s=0.1732, P<0.05)およびApproaching(rs=0.1423,P<0.05)の12項目であった。また糞中E値とこれらの行動の頻度は,共に季節的に変動し初冬から晩春にかけて高値を示した。チーターでも,糞中Eのピーク日やその直前にRollingが頻発し,両者の間には有意な正の相関関係が認められた(r_s=0.2714, P<0.05)。以上の結果から,飼育下の雌ユキヒョウと雌チーターにおいて,発情ホルモン動態と関連したこれらの行動を観察することで,適切な交尾のタイミングを予測できる可能性が示唆された。