著者
芦谷 圭祐
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1_316-1_344, 2019 (Released:2020-06-21)
参考文献数
57

日本政治における女性の政治的過少代表が問題とされて久しい。これまでの研究では、立候補過程における障壁が特に女性にとって高いことが注目される傾向にあり、リクルートメントを担う主体として政党の役割が重視されてきた。一方で、政党がどのような選挙区に女性の新人候補者を擁立するのかについては、理論的にも実証的にも十分には明らかでない。政党の役割が重視されていることとは対照的である。本稿では、1989年以降の政令市議会議員選挙を対象に、政党のリクルート過程の分権性と政党間関係に着目し、政党がどのような選挙区に、あるいはどのような場合に女性の新人候補者を擁立するのかについての理論構築とその検証を試みた。 分析結果からは、以下の点が明らかになった。政党は自党に女性の現職議員がいる選挙区には女性の新人候補を積極的に擁立することが難しい。その一方で、対立的な関係にある政党の女性現職議員がいる選挙区には、積極的に女性の新人候補を擁立している。これらの結果は、活発な政党間競争が女性議員の数を増加させる可能性を示唆している。
著者
芦谷 圭祐
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.68-79, 2020 (Released:2023-11-16)
参考文献数
29

地方議員は議会でどのような争点を取り上げているのだろうか。本稿は,量的テキスト分析を用いて,10万件を超える大規模なテキストデータを機械的に解析することにより,地方議員の代表活動の特徴を量的に明らかにする。具体的には,五大市の議会常任委員会における常任委員の全発言に対して,構造的トピックモデルを用いた分析を実施する。明らかになったのは,以下の通りである。第一に,特別に有権者や議員の関心が高い争点を除けば,議員は概ね有権者の関心の高い争点を議会で取り上げている。第二に,争点ごとに積極的に言及する議員は異なっている。女性議員など,特定の属性の議員が取り上げやすい争点もあれば,特定の政党が一体的に取り上げている争点もある。以上の結果からは,議会が多様な属性を有する議員によって構成されるようになると,議会討論もより多様な争点に及ぶものになることが示唆される。