著者
花岡 創 伊東 宏樹
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.39-50, 2020-06-25 (Released:2020-07-14)
参考文献数
37

北海道における主要造林樹種の一つであるアカエゾマツを対象に,根元曲がりや幹曲がりの程度について,気象条件に差がある検定林間及び家系間変動を検証した。共通家系が植栽された9ヶ所の検定林における20年次の根元曲がりと幹曲がりの程度に関するデータ(1~5の順序カテゴリカルデータ)を供試し,検定林及び検定林内反復,検定林内の植栽プロット,家系,検定林と家系の交互作用の効果を順序ロジットモデルを用いて評価した。その結果,検定林,検定林内反復,検定林内植栽プロットの効果が相対的に大きい傾向があった。特に道北地域に設定された検定林で負の効果が,道央の検定林で正の効果が顕著な傾向があったことから,根元曲がりや幹曲がりに対して積雪に関連する環境的な効果が大きかったこと,また,植栽プロットについても正または負の効果が大きかったエリアが集中しており,局所的な地形等の環境条件の効果も大きかったことが推察された。根元曲がりや幹曲がりに対する家系の効果の大きさは環境的な効果に比べると小さかったものの,有意な正または負の効果を示した家系が存在した。一方で,検定林と家系の交互作用は検出されなかった。それゆえ,環境条件に関わらず優れた遺伝的特性を示す家系が存在し,アカエゾマツでは根元曲がりや幹曲がりへの抵抗性は育種により改良が見込まれることが考えられた。
著者
三浦 真弘 花岡 創 平岡 裕一郎 井城 泰一 磯田 圭哉 武津 英太郎 高橋 誠 渡辺 敦史
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.126, 2015

林木は、異なる環境に種苗を移動した場合、成長等形質に影響する可能性が懸念される。このため、主要林業用樹種のスギでは、環境条件や天然分布の情報を基に種苗配布区域が設定され、種苗の移動が制限されてきた。一方、林木育種事業により設定された次代検定林の調査データとGISデータを利用して特定地域内の林木の移動による影響評価の解析を行ってきたところ、確かに移動の方向により不利益が生じる場合が認められるものの、影響を生じない場合もあることなどが明らかとなった。しかし、日本では共通系統を利用して異なる環境間の大規模植栽試験の実施とその詳細な影響評価について報告例がなく、広域の種苗移動による影響の有無について不明なままである。本研究では、全国各地のスギ精英樹27クローンを用いて、全国9カ所の苗畑で2年間の成長を調査し、産地および植栽場所による成長への影響を評価した。これらのデータを元に種苗を移動した場合のスギの影響評価について検討を行い、現行の種苗配布について議論を行う。