著者
村上 正人 松野 俊夫 金 外淑 小池 一喜 井上 幹紀親 三浦 勝浩 花岡 啓子 江花 昭一 橋本 修
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.893-902, 2009
参考文献数
24
被引用文献数
5

近年わが国でも注目されてきた線維筋痛症候群(fibromyalgia syndrome;FMS)は,長期間持続する全身の結合織における疼痛と多彩な愁訴を呈する慢性疼痛のモデルともいえる病態であるが,心身症としての側面を濃厚に有している疾患でもある.発症の背景には何らかの遺伝的,生理学的要因に加え,女性の内分泌的な内的環境の変化やライフサイクル上の多彩な心理社会的ストレス要因も大きく関係する.患者の90%以上に発症の時期に一致して手術・事故・外傷・出産・肉体的過労・過剰な運動などのエピソードがあり,天候,環境変化や不安・抑うつ・怒り・強迫・過緊張・焦燥などの心理的ストレスと連動して病態が変動する,強迫,完全性,執着などの性格特性がみられる,など強い心身相関が認められる.患者の尿中セロトニン,ノルアドレナリンの代謝産物である5HIAAやMHPG,骨格筋の解糖系に関与するアシルカルニチンはうつ病患者と同等に低値であり,FMSの痛みや倦怠感,多彩な身体症状,精神症状の背景にモノアミンやカルニチン代謝が関与していることが示唆される.FMSの治療には通常の対症療法が奏効しないため,的確な薬物療法が重要でSSRIやSNRIなどの抗うつ薬,抗けいれん薬,漢方薬などが併用される.さらにストレス緩和のための生活指導や心身医学的な視点からのカウンセリング,認知行動療法など全人的治療が必須である.この考え方はFMSのみならず他の慢性疼痛にも共通しており,薬物や理学的治療法などの「医療モデル」に加え「成長モデル」からアプローチする重要性は変わらないものである.
著者
花岡 啓子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.1011-1017, 2011-11-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
9

交流分析の中で近年発達してきた人格適応論では,パーソナリティのタイプを6つに分類し,それぞれの適応型に応じた治療のアプローチについて詳しく述べている.それぞれのタイプは異なった治療のドアがあり,それを間違えると治療は進まない.人はそれぞれ思考,感情,行動の3つのいずれかの領域が,人間関係を作る入口(治療のドア)になっている.治療のドアには患者と信頼関係を築く最初の入口となるオープンドア,治療により統合が必要なターゲットドア,そして,早期に触れると防衛的になるトラップドアがあり,それぞれ思考,感情,行動のいずれかに当たる.6つの適応型の脚本と課題,治療のドアと治療のアプローチについて,症例を示しながら解説する.