著者
村上 正人 松野 俊夫 小池 一喜 佐藤 弥都子 武井 正美 松川 吉博 澤田 滋正
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.81-86, 2006-03-30 (Released:2016-12-30)
参考文献数
12

Fibromyalgia syndrome (FMS) is the most commonly encountered disorder among the extraarticular rheumatic diseases, and is characterized by long-lasting generalized pain of the fibromuscular tissue and various unidentified symptoms. However, diagnosis and treatment of FMS have not been discussed seriously in Japan, because disease-specific laboratory test findings are difficult to collect on its pathological state. Since the onset and clinical course of Fibromyalgia Syndrome (FMS) involves many psychosocial factors, its diagnosis and treatment crucially require the understanding of FMS from a psychosomatic perspective. In the past study, we reported that the experience of physical trauma or excessive stress underlay in the background of chronic pain in FMS. It is considered that chronic pain, numerous indefinite complaints and autonomic nervous symptoms are developed from physical and/or mental exhaustion, when anxiety, fear, obsession, depression, sorrow, anger or other psychosocial stresses, as well as physical or mental fatigue are combined with the above background. As for medication, NSAIDs were effective, especially in its early period of FMS treatment. However, in the chronic stage of FMS, tricyclic antidepressants, SSRI, SNRI and other antidepressants, and anticonvulsive agents such as clonazepam are sometimes effective, which may improve the serotonin-and noradrenalinmediated descending analgesic system, contraction of muscular and vascular systems, and/or bloodstream disorders. As a matter of fact, the largest number of physicians selected SSRI, SNRI as first-line drugs, indicating the standpoint of psychosomatic specialists to take into account the significance of psychotherapy. We tried to investigate the efficacy of Milnacipran, especially early effect for chronic pain, and discussed the application and indication of Milnacipran for FMS. Psychosomatic specialists often incorporates certain psychotherapy into treatment. Several psychotherapies are applied for treatment of FMS such as cognitive behavioral therapy (CBT), autogenic training, brief psychotherapy and general counseling. CBT is one of the most commonly used therapeutic methods in psychosomatic medicine, which seeks to develop the healthy conditions by the recovery of healthy way of thinking and behavior.
著者
芦原 睦 荒木 登茂子 松野 俊夫 江花 昭一 坂野 雄二 鈴木 理俊 菊池 浩光
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.745-753, 2004-10-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1

医療における心理士の資格について議論されて久しい. 本学会においても, 1995年の第36回日本心身医学会総会(末松弘行会長)の際にワークショップ「臨床心理の現状と今後の課題」で取り上げられて以来, ほぼ毎年議論が続けられている. さらに, 2000年6月にはコメディカルスタッフ認定制度委員会が発足し, 具体的な医療心理士(仮称)制度の制定と運用に関する議論を重ねてきた. 同委員会の2001年12月までの活動報告は, 本誌42巻8号「医療における心理士の資格-現状と現実的問題点を含めて」に記載したので参考にされたい. 今回は, その後の議論を含め, 第44回日本心身医学会総会(石津宏会長)での, パネルディスカッションにおける各パネリストの発表をもとにした総説としたい. まず, 医療心理士の現状と研修という点から, 心理士と医師の各々の立場から述べた松野論文と江花論文を掲載したい.
著者
金 外淑 村上 正人 松野 俊夫 釋 文雄 丸岡 秀一郎
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.439-444, 2016 (Released:2016-05-01)
参考文献数
10
被引用文献数
2

線維筋痛症は身体症状の複雑化とともに, 怒り, 不安, 抑うつなど多岐にわたる心理的状態をきたすため, 心理的支援に限らず, 種々の専門科の専門性を生かした適切な支援の充実が必要とされている. 本研究では, 線維筋痛症患者特有の痛みが起こる状況を取り上げ, これまでの調査, 臨床での実践研究を通して得られた知見をもとに, 痛みが起こる諸要因の動きに着目し, 患者個人に応じた支援を充実させる心理的支援の方策を探った. その結果, 痛みが起こる背後に隠れている複数の要因を4つのタイプに分類し, それをもとに心理的支援の新たな基盤づくりを試みた. また, 患者が訴える痛みの強度や頻度に意識を向けるだけではなく, 痛みと向き合える心身の健康づくりや, 家族面接を契機に痛み症状の改善につながった例を取り上げ, 臨床の実際について提言した.
著者
塚本 路子 村上 正人 松野 俊夫 塚本 克彦 縄田 昌子 瀬戸 恵理 山縣 然太朗
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.183-189, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
22

片頭痛は遺伝的因子が関与する可能性が高く女性に多い疾患である. 女性片頭痛患者の60%は月経周期に関連して片頭痛が生じており, 月経前に起こるエストロゲン離脱が片頭痛発作と深く関係しているといわれている. そこで, 海外から片頭痛との関連が報告されたエストロゲン受容体の遺伝子多型 (ESR1 397T>C, 325C>G, 594G>A) と涼冷刺激受容体TRPM8の遺伝子多型 (rs10166942) を, 当院を受診した月経に関連する片頭痛患者41例と対照群41例について調べた. その結果, 日本人においてもESR1 397およびESR1 325は, 月経に関連する片頭痛に関連があることが示唆された. 問診による調査では, 患者群の80.5%に家族歴があり, 片頭痛の出現は82.9%の患者において月経に伴いエストロゲンが変動するようになる初経年齢以降だった. また, 片頭痛患者がしばしば訴える 「冷えによる痛み」 と 「車酔い」 が患者群に有意に多く認められた.
著者
塚本 路子 村上 正人 松野 俊夫 塚本 克彦 縄田 昌子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.347-351, 2018 (Released:2018-05-01)
参考文献数
13

女性患者が日常生活に支障をきたしていても羞恥心のために医療機関を受診しづらい症状の一つに外陰部痛がある. 外陰部痛の中でも特に器質的疾患が認められないvulvodyniaは治療に難渋することが多い. 今回われわれは, 漢方薬内服と心理療法が有効であったvulvodyniaの症例を経験した. そこでvulvodyniaの病態と治療について, 漢方医学および西洋医学の視点から心身医学的に考察した. 本症例は, 漢方医学的には腎虚と瘀血の所見がみられ, 八味地黄丸と桂枝茯苓丸が有効であった. Vulvodyniaは西洋医学的には外陰部の血流障害や筋肉の攣縮としてとらえられ, 治療薬として抗うつ薬や抗けいれん薬などが用いられる. またvulvodyniaには今回の症例のように心理療法を含む心身医学的なアプローチも大切である.
著者
村上 正人 松野 俊夫 金 外淑 三浦 勝浩
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.1157-1163, 2010-12-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
21
被引用文献数
1

線維筋痛症(fibromyalgia:FM)は長期にわたる筋骨格系の広汎性疼痛を特徴とする慢性疼痛のモデルともいえる疾患である.FMの発症と臨床経過には多くの心理社会的要因が関与しており,しばしばその症状は天候,環境,社会的出来事,心理社会的ストレス,身体的状況によって悪化する.時にFM患者の痛みや多彩な症状は怒り,恨み,不安,破滅的で抑うつ的な気分に敏感に影響を受ける.そのような情動形成には強い強迫性,熱中性,完全性,神経質さなどのパーソナリティ特性や,いわゆる偏った「人生脚本」に基づいた過剰適応や自己禁止令などのライフスタイルも関与する.否定的感情,それに引き続いて生じる心身の疲弊は全身の筋骨格系や内臓の筋攣縮や虚血,過敏性などを惹起し,痛みを増強させ遷延化させる.これらの情動的ストレスやパーソナリティ上の問題の解決と治療のためには,薬物療法に加え,認知行動療法,交流分析,ブリーフセラピー,その他の専門的心理療法の組み合わせの有効性が期待できる.このようにFMの病態評価や治療のためには心身医学的な視点からの配慮が重要である.
著者
村上 正人 松野 俊夫 金 外淑 小池 一喜 井上 幹紀親 三浦 勝浩 花岡 啓子 江花 昭一 橋本 修
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.893-902, 2009
参考文献数
24
被引用文献数
5

近年わが国でも注目されてきた線維筋痛症候群(fibromyalgia syndrome;FMS)は,長期間持続する全身の結合織における疼痛と多彩な愁訴を呈する慢性疼痛のモデルともいえる病態であるが,心身症としての側面を濃厚に有している疾患でもある.発症の背景には何らかの遺伝的,生理学的要因に加え,女性の内分泌的な内的環境の変化やライフサイクル上の多彩な心理社会的ストレス要因も大きく関係する.患者の90%以上に発症の時期に一致して手術・事故・外傷・出産・肉体的過労・過剰な運動などのエピソードがあり,天候,環境変化や不安・抑うつ・怒り・強迫・過緊張・焦燥などの心理的ストレスと連動して病態が変動する,強迫,完全性,執着などの性格特性がみられる,など強い心身相関が認められる.患者の尿中セロトニン,ノルアドレナリンの代謝産物である5HIAAやMHPG,骨格筋の解糖系に関与するアシルカルニチンはうつ病患者と同等に低値であり,FMSの痛みや倦怠感,多彩な身体症状,精神症状の背景にモノアミンやカルニチン代謝が関与していることが示唆される.FMSの治療には通常の対症療法が奏効しないため,的確な薬物療法が重要でSSRIやSNRIなどの抗うつ薬,抗けいれん薬,漢方薬などが併用される.さらにストレス緩和のための生活指導や心身医学的な視点からのカウンセリング,認知行動療法など全人的治療が必須である.この考え方はFMSのみならず他の慢性疼痛にも共通しており,薬物や理学的治療法などの「医療モデル」に加え「成長モデル」からアプローチする重要性は変わらないものである.
著者
金 外淑 松野 俊夫 村上 正人 釋 文雄 丸岡 秀一郎
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.327-333, 2018 (Released:2018-05-01)
参考文献数
7

慢性痛のセルフマネジメントに有効とされる認知行動療法を取り上げ, 線維筋痛症患者に対する多元的な視点による痛みのアセスメントと, 痛みの変化や今ある痛みと上手に付き合うための支援について述べた. また, 地域での新しい取り組みとして, 痛みで困っている患者やその家族を対象とした, 心理教育を中心とするセルフヘルプ支援をグループで学ぶ認知行動療法を試みた. 4つの地域での自由記述と予備調査の結果, 患者と家族間の考え方のズレや葛藤が読み取れ, さらに痛みが起こりやすい考え方や行動タイプなどの共通点が推測された. 特に慢性痛に現れやすい痛み関連行動が起きやすい内的・外的状況を把握し治療環境を整えることが, 今後起こり得る痛み行動の予防につながることも再認識できた. 最後には, これらの結果を踏まえ, 症例でみる痛み関連行動が起こる前後の状況に応じた支援の実際について報告した.
著者
松野 俊夫
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.939-943, 2017 (Released:2017-09-01)
参考文献数
3

心理職の国家資格化に対する具体的な動きは, 近年では1990年に厚生省 (当時) による臨床心理技術者業務資格制度検討会として開始された. 検討会は厚生科学研究事業と名称を変えながら2001年度まで継続され, その後約15年の関係者による努力の結果が 「公認心理師法」 として2015年9月に実現した. 2016年9月には大学および大学院での養成カリキュラム, 試験科目, 現在心理職として業務を行っている者への特例措置, など法律の内容を具体化するための検討会が始まり, 2017年5月31日に 「公認心理師カリキュラム等検討会報告書」 として公表され, 公認心理師法の具体的な内容が明らかになった. 特に医療の領域ではこれまで医師の指導・指示の下であっても, 無資格で心理療法・心理検査などのさまざまな心理臨床活動を行ってきた状況が, 「公認心理師」 法の施行により心理職の職能と責務が明確となり, チーム医療の一員として真に職責を担う環境が整ったと考えられる.今後心身医療の中で公認心理師が関わることが期待されている勤労者のストレス予防に対する取り組みについて, 公認心理師法成立の経過をたどりながら課題を整理した.
著者
金 外淑 村上 正人 松野 俊夫
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.143-156, 2006-09-30 (Released:2019-04-06)

外来通院中の全般性不安障害患者に対して、認知行動的諸技法を用い、治療効果が得られた症例を取り上げ、認知行動的介入による心理技法の導入とその臨床経過について報告する。面接による治療は52セッションであった。介入の初期段階は患者特有の心配・不安に対する仕方に注目し、論理情動行動療法による認知再構成法を用い、心配や不安時に生じる認知の仕方について理解させた。中期段階は、イメージを用いた「心配へのエクスポージャー」と「言葉による反応妨害法」を組み合わせた介入を行った。後期段階では、おもに問題解決訓練を導入し、出来事に対する問題解決の能力を向上させ、自信を高める介入を行った。その結果、過剰な心配・不安症状を訴える頻度も減り、次第に日常生活上のストレスも以前より柔軟に対処できるようになった。
著者
今津 芳恵 松野 俊夫 村上 正人 林 葉子 杉山 匡
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.263-270, 2016

心療内科に通院中の患者233名を対象に, ストレス反応を測定するPublic Health Research Foundationストレスチェックリスト・ショートフォーム (以下, PHRF-SCL〔SF〕) と自己成長エゴグラム (以下, SGE) を実施し, その関連を検討した. SGEの得点のクラスター分析から, 「A高位Wタイプ」, 「A低位Mタイプ」, 「FC低位Vタイプ」, 「NP高位 ‘ヘ’ タイプ」が抽出された. それぞれについて, PHRF-SCL (SF) の下位尺度ごとに偏差値を算出し, 一元配置分散分析により平均の差を検討した. その結果, 「FC低位Vタイプ」はストレス反応が他のタイプより高く, 「NP高位 ‘ヘ’ タイプ」は他のタイプより低かった. PHRF-SCL (SF) とエゴグラムとの関連が認められ, その関連性は先行研究と一致するものであり, PHRF-SCL (SF) の構成概念妥当性の一端が検証された.