著者
村上 正人
出版者
日本脊髄外科学会
雑誌
脊髄外科 (ISSN:09146024)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.260-265, 2016 (Released:2017-01-31)
参考文献数
24

9 0 0 0 OA II.線維筋痛症

著者
村上 正人 金 外淑
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.2077-2087, 2019-10-10 (Released:2020-10-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1

線維筋痛症は,臨床検査や画像検査で異常所見が認められないため,自覚症状から診断せざるを得ないリウマチ性疾患の代表的な疾患であり,慢性疼痛のモデル的疾患でもある.中高年の女性に多く発症し,全身の筋肉や腱等の結合組織の痛みを中心に多彩な心身の愁訴を有するために,十分な鑑別診断が必要であるが,近年注目され始めた「機能性身体症候群」の概念が線維筋痛症の病態を理解するうえで有用である.リウマチ性疾患のなかでの線維筋痛症の位置付けや機能性身体症候群との関わり,診断と治療について論ずる.
著者
村上 正人 松野 俊夫 小池 一喜 佐藤 弥都子 武井 正美 松川 吉博 澤田 滋正
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.81-86, 2006-03-30 (Released:2016-12-30)
参考文献数
12

Fibromyalgia syndrome (FMS) is the most commonly encountered disorder among the extraarticular rheumatic diseases, and is characterized by long-lasting generalized pain of the fibromuscular tissue and various unidentified symptoms. However, diagnosis and treatment of FMS have not been discussed seriously in Japan, because disease-specific laboratory test findings are difficult to collect on its pathological state. Since the onset and clinical course of Fibromyalgia Syndrome (FMS) involves many psychosocial factors, its diagnosis and treatment crucially require the understanding of FMS from a psychosomatic perspective. In the past study, we reported that the experience of physical trauma or excessive stress underlay in the background of chronic pain in FMS. It is considered that chronic pain, numerous indefinite complaints and autonomic nervous symptoms are developed from physical and/or mental exhaustion, when anxiety, fear, obsession, depression, sorrow, anger or other psychosocial stresses, as well as physical or mental fatigue are combined with the above background. As for medication, NSAIDs were effective, especially in its early period of FMS treatment. However, in the chronic stage of FMS, tricyclic antidepressants, SSRI, SNRI and other antidepressants, and anticonvulsive agents such as clonazepam are sometimes effective, which may improve the serotonin-and noradrenalinmediated descending analgesic system, contraction of muscular and vascular systems, and/or bloodstream disorders. As a matter of fact, the largest number of physicians selected SSRI, SNRI as first-line drugs, indicating the standpoint of psychosomatic specialists to take into account the significance of psychotherapy. We tried to investigate the efficacy of Milnacipran, especially early effect for chronic pain, and discussed the application and indication of Milnacipran for FMS. Psychosomatic specialists often incorporates certain psychotherapy into treatment. Several psychotherapies are applied for treatment of FMS such as cognitive behavioral therapy (CBT), autogenic training, brief psychotherapy and general counseling. CBT is one of the most commonly used therapeutic methods in psychosomatic medicine, which seeks to develop the healthy conditions by the recovery of healthy way of thinking and behavior.
著者
村上 正人
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.398-403, 2004 (Released:2007-08-24)
参考文献数
14
被引用文献数
1

人間の感情が動くときに象徴的な咳反応や咳症状が出現するように,咳は必ずしも気道の刺激だけではなく情緒的な刺激によっても生じることがある。いわゆる神経性咳嗽nervous coughは決して多い疾患ではないが,的確な診断と治療がなされないと,改善されぬまま慢性の経過をとりやすい。神経性咳嗽は何らかの心理的機制により,発作性,あるいは持続性に乾性咳嗽が生じるものである。しかし心因性,神経性といいながらよく病歴をとってみるとかつて急性上気道炎,咽喉頭炎や気管支炎に罹患したことが契機になり発症することが多い。長期間持続する慢性咳嗽の鑑別診断は慎重に行い,特に咳喘息との鑑別は重要である。咳反射に対する過敏性を獲得するプロセスに何らかの心理社会的ストレス要因が関与して発症するとされ,ヒステリーによる象徴的な症状(転換症状),内的緊張のはけ口としての咳,緊張時の音声チックと同様なメカニズムなどが考えられている。診断,治療に当たって,bio-psycho-socialな視点からの理解とアプローチが必要である。本症ではしばしば不安障害やうつ状態が合併しており,抗不安薬や抗うつ薬などの神経系作用薬がよく奏効することが多い。心理的要因が症状悪化につながっているときには専門的な心理療法を導入する。
著者
金 外淑 村上 正人 松野 俊夫 釋 文雄 丸岡 秀一郎
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.439-444, 2016 (Released:2016-05-01)
参考文献数
10
被引用文献数
2

線維筋痛症は身体症状の複雑化とともに, 怒り, 不安, 抑うつなど多岐にわたる心理的状態をきたすため, 心理的支援に限らず, 種々の専門科の専門性を生かした適切な支援の充実が必要とされている. 本研究では, 線維筋痛症患者特有の痛みが起こる状況を取り上げ, これまでの調査, 臨床での実践研究を通して得られた知見をもとに, 痛みが起こる諸要因の動きに着目し, 患者個人に応じた支援を充実させる心理的支援の方策を探った. その結果, 痛みが起こる背後に隠れている複数の要因を4つのタイプに分類し, それをもとに心理的支援の新たな基盤づくりを試みた. また, 患者が訴える痛みの強度や頻度に意識を向けるだけではなく, 痛みと向き合える心身の健康づくりや, 家族面接を契機に痛み症状の改善につながった例を取り上げ, 臨床の実際について提言した.
著者
塚本 路子 村上 正人 松野 俊夫 塚本 克彦 縄田 昌子 瀬戸 恵理 山縣 然太朗
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.183-189, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
22

片頭痛は遺伝的因子が関与する可能性が高く女性に多い疾患である. 女性片頭痛患者の60%は月経周期に関連して片頭痛が生じており, 月経前に起こるエストロゲン離脱が片頭痛発作と深く関係しているといわれている. そこで, 海外から片頭痛との関連が報告されたエストロゲン受容体の遺伝子多型 (ESR1 397T>C, 325C>G, 594G>A) と涼冷刺激受容体TRPM8の遺伝子多型 (rs10166942) を, 当院を受診した月経に関連する片頭痛患者41例と対照群41例について調べた. その結果, 日本人においてもESR1 397およびESR1 325は, 月経に関連する片頭痛に関連があることが示唆された. 問診による調査では, 患者群の80.5%に家族歴があり, 片頭痛の出現は82.9%の患者において月経に伴いエストロゲンが変動するようになる初経年齢以降だった. また, 片頭痛患者がしばしば訴える 「冷えによる痛み」 と 「車酔い」 が患者群に有意に多く認められた.
著者
塚本 路子 村上 正人 松野 俊夫 塚本 克彦 縄田 昌子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.347-351, 2018 (Released:2018-05-01)
参考文献数
13

女性患者が日常生活に支障をきたしていても羞恥心のために医療機関を受診しづらい症状の一つに外陰部痛がある. 外陰部痛の中でも特に器質的疾患が認められないvulvodyniaは治療に難渋することが多い. 今回われわれは, 漢方薬内服と心理療法が有効であったvulvodyniaの症例を経験した. そこでvulvodyniaの病態と治療について, 漢方医学および西洋医学の視点から心身医学的に考察した. 本症例は, 漢方医学的には腎虚と瘀血の所見がみられ, 八味地黄丸と桂枝茯苓丸が有効であった. Vulvodyniaは西洋医学的には外陰部の血流障害や筋肉の攣縮としてとらえられ, 治療薬として抗うつ薬や抗けいれん薬などが用いられる. またvulvodyniaには今回の症例のように心理療法を含む心身医学的なアプローチも大切である.
著者
村上 正人 松野 俊夫 金 外淑 三浦 勝浩
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.1157-1163, 2010-12-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
21
被引用文献数
1

線維筋痛症(fibromyalgia:FM)は長期にわたる筋骨格系の広汎性疼痛を特徴とする慢性疼痛のモデルともいえる疾患である.FMの発症と臨床経過には多くの心理社会的要因が関与しており,しばしばその症状は天候,環境,社会的出来事,心理社会的ストレス,身体的状況によって悪化する.時にFM患者の痛みや多彩な症状は怒り,恨み,不安,破滅的で抑うつ的な気分に敏感に影響を受ける.そのような情動形成には強い強迫性,熱中性,完全性,神経質さなどのパーソナリティ特性や,いわゆる偏った「人生脚本」に基づいた過剰適応や自己禁止令などのライフスタイルも関与する.否定的感情,それに引き続いて生じる心身の疲弊は全身の筋骨格系や内臓の筋攣縮や虚血,過敏性などを惹起し,痛みを増強させ遷延化させる.これらの情動的ストレスやパーソナリティ上の問題の解決と治療のためには,薬物療法に加え,認知行動療法,交流分析,ブリーフセラピー,その他の専門的心理療法の組み合わせの有効性が期待できる.このようにFMの病態評価や治療のためには心身医学的な視点からの配慮が重要である.
著者
村上 正人 松野 俊夫 金 外淑 小池 一喜 井上 幹紀親 三浦 勝浩 花岡 啓子 江花 昭一 橋本 修
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.893-902, 2009
参考文献数
24
被引用文献数
5

近年わが国でも注目されてきた線維筋痛症候群(fibromyalgia syndrome;FMS)は,長期間持続する全身の結合織における疼痛と多彩な愁訴を呈する慢性疼痛のモデルともいえる病態であるが,心身症としての側面を濃厚に有している疾患でもある.発症の背景には何らかの遺伝的,生理学的要因に加え,女性の内分泌的な内的環境の変化やライフサイクル上の多彩な心理社会的ストレス要因も大きく関係する.患者の90%以上に発症の時期に一致して手術・事故・外傷・出産・肉体的過労・過剰な運動などのエピソードがあり,天候,環境変化や不安・抑うつ・怒り・強迫・過緊張・焦燥などの心理的ストレスと連動して病態が変動する,強迫,完全性,執着などの性格特性がみられる,など強い心身相関が認められる.患者の尿中セロトニン,ノルアドレナリンの代謝産物である5HIAAやMHPG,骨格筋の解糖系に関与するアシルカルニチンはうつ病患者と同等に低値であり,FMSの痛みや倦怠感,多彩な身体症状,精神症状の背景にモノアミンやカルニチン代謝が関与していることが示唆される.FMSの治療には通常の対症療法が奏効しないため,的確な薬物療法が重要でSSRIやSNRIなどの抗うつ薬,抗けいれん薬,漢方薬などが併用される.さらにストレス緩和のための生活指導や心身医学的な視点からのカウンセリング,認知行動療法など全人的治療が必須である.この考え方はFMSのみならず他の慢性疼痛にも共通しており,薬物や理学的治療法などの「医療モデル」に加え「成長モデル」からアプローチする重要性は変わらないものである.
著者
金 外淑 松野 俊夫 村上 正人 釋 文雄 丸岡 秀一郎
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.327-333, 2018 (Released:2018-05-01)
参考文献数
7

慢性痛のセルフマネジメントに有効とされる認知行動療法を取り上げ, 線維筋痛症患者に対する多元的な視点による痛みのアセスメントと, 痛みの変化や今ある痛みと上手に付き合うための支援について述べた. また, 地域での新しい取り組みとして, 痛みで困っている患者やその家族を対象とした, 心理教育を中心とするセルフヘルプ支援をグループで学ぶ認知行動療法を試みた. 4つの地域での自由記述と予備調査の結果, 患者と家族間の考え方のズレや葛藤が読み取れ, さらに痛みが起こりやすい考え方や行動タイプなどの共通点が推測された. 特に慢性痛に現れやすい痛み関連行動が起きやすい内的・外的状況を把握し治療環境を整えることが, 今後起こり得る痛み行動の予防につながることも再認識できた. 最後には, これらの結果を踏まえ, 症例でみる痛み関連行動が起こる前後の状況に応じた支援の実際について報告した.
著者
丸岡 秀一郎 釋 文雄 村上 正人
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.317-321, 2016

気管支喘息 (以下, 喘息) の病態形成には, 遺伝因子と環境因子が深く関与している. 環境因子の一つとして心理社会的ストレス (以下, ストレス) がある. ストレスがどのように呼吸器疾患の発症機序に影響を及ぼしているのか依然不明な点が多い. 近年, エピジェネティクスという学問領域が注目されている. DNAメチル化, ヒストン修飾, ノンコーディングRNA (non-coding RNA : ncRNA) などにより遺伝子の暗号を変化させることなく, 疾患関連遺伝子の発現調整をするシステムであり, 環境因子 (ストレスなど) によりエピゲノムに修飾が起こり, 疾患の表現型決定に影響し, さらに世代を超えて保存される. 本稿では, ストレス誘導性エピゲノム修飾について総括し, 呼吸器心身症の代表である喘息の病態形成について考察する.
著者
丸岡 秀一郎 村上 正人
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.130-135, 2013-02-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
28

アレルギー疾患の代表的疾患である気管支喘息は,さまざまな環境因子の影響を受けている.ハウスダストダニ抗原やゴキブリ抗原などに代表されるアレルゲンだけではなく,抗原性をもたない環境因子(細菌,オゾン,ディーゼル排気粒子,ウイルス感染,煙草など)も,その免疫賦活作用(アジュバント効果)により病態形成に関与していることが知られている.環境因子を介するエピジェネティクスは心理社会的ストレスも加味されてアレルギー性気道炎症を惹起して気管支喘息の発症に関与しているとされる.心身医学的側面については過去に多くの研究がなされてきたが,いまだその詳細なメカニズムについては不明な点が多い.本稿では,最新の文献をもとに環境ストレスと気管支喘息発症のメカニズムについて心身医学的側面から考察する.
著者
金 外淑 村上 正人 松野 俊夫
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.143-156, 2006-09-30 (Released:2019-04-06)

外来通院中の全般性不安障害患者に対して、認知行動的諸技法を用い、治療効果が得られた症例を取り上げ、認知行動的介入による心理技法の導入とその臨床経過について報告する。面接による治療は52セッションであった。介入の初期段階は患者特有の心配・不安に対する仕方に注目し、論理情動行動療法による認知再構成法を用い、心配や不安時に生じる認知の仕方について理解させた。中期段階は、イメージを用いた「心配へのエクスポージャー」と「言葉による反応妨害法」を組み合わせた介入を行った。後期段階では、おもに問題解決訓練を導入し、出来事に対する問題解決の能力を向上させ、自信を高める介入を行った。その結果、過剰な心配・不安症状を訴える頻度も減り、次第に日常生活上のストレスも以前より柔軟に対処できるようになった。
著者
田澤 英二郎 加野 博之 松本 苗緒 村上 正人
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.45-52, 2018 (Released:2018-08-01)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

“Adzuki Ann” prepared from Adzuki beans is a popular paste (Ann), which is generally used in Japanese confectionery. In product development and quality control, it is necessary to perform quantitative evaluations using sensory evaluation and chemical analyses. However, few studies have examined the most appropriate methods for assessing the flavor of Adzuki Ann. Therefore, in this study, we focused on the flavor of Adzuki Ann, defined “deliciousness” of Adzuki Ann (Tsubu Ann type; paste with remaining grains), then optimized the method for sensory evaluation, and identified aroma compounds contributing to the flavor. As a result of sensory evaluation of Adzuki Ann used for preparing Dorayaki sweets available in commercial markets, we clarified that Adzuki Ann, which is recognized as “delicious” popularly, has “moderate sweetness and rich Adzuki flavor”. This accorded with the definition of delicious Adzuki Ann flavor. Additionally, sensory evaluation scores of Adzuki flavor showed a strong correlation with maltol and cyclotene content which are important aroma compounds contributing to Adzuki flavor. In particular, as a result of the addition of cyclotene to Adzuki Ann, sensory evaluation scores of Adzuki flavor decreased significantly. This suggests that cyclotene may be an inhibitor of Adzuki flavor.

1 0 0 0 OA 河床材料調査

著者
村上 正人
出版者
公益社団法人 砂防学会
雑誌
砂防学会誌 (ISSN:02868385)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.59-63, 2019-03-15 (Released:2020-03-16)
参考文献数
5
被引用文献数
1
著者
松平 浩 川口 美佳 村上 正人 福土 審 橋爪 誠 岡 敬之 Bernd Löwe
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.931-937, 2016 (Released:2016-09-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1

目的 : Somatic Symptom Scale-8 (SSS-8) は, 身体症状による負担感を評価する自記式の質問票である. 今回, SSS-8をわが国へ導入するため, 原作の英語版を翻訳し, 言語的妥当性を担保した日本語版を作成した.  方法 : 原作者から日本語版作成の許可を得た後, 言語的に妥当な翻訳版を作成する際に標準的に用いられる手順 (順翻訳→逆翻訳→患者調査) に従って日本語版を作成した.  結果 : 日本語を母国語とする2名の翻訳者が, それぞれ日本語に翻訳し, 一つの翻訳案にまとめた [順翻訳] . 英語を母国語とする翻訳者が日本語案を英語に翻訳し直した [逆翻訳] . 次に, 原作者との協議を通じ, 原作版と日本語案の概念の整合性を確認し, 日本語暫定版を作成した. 筋骨格系疼痛および身体症状の経験を有す患者5名 (男性2名, 女性3名 ; 平均年齢54.4歳) に調査を行った結果, 全体として, 日本語暫定版の表現に問題はないと判断した.  結論 : 一連の過程を経て, 言語的妥当性が担保された日本語版SSS-8を確定した.
著者
村上 正人
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.434-442, 2021 (Released:2021-07-01)
参考文献数
22

リウマチ性疾患は自己免疫, アレルギーなどの免疫応答の異常による慢性炎症性疾患であり, 機能性リウマチ性疾患である線維筋痛症は慢性疼痛, 心身症のモデル的疾患である.いずれも遺伝的要因, 環境要因, 心身のストレス要因などが発症と経過に関係し, 病態理解と診断, 治療のためには心身医学的な視点を必要とする疾患である. これらの疾患は人種, 民族を超えて共通の病態を呈していながら, 疾患のとらえ方や対応はさまざまであり, 世界的な流れをみるには国際的な情報交換や情報発信が重要である. 筆者はリウマチ学, 心身医学の専門的立場からリウマチ性疾患, 特に線維筋痛症の臨床に携わってきたが, 米国留学, 国際学会への出席, ドイツ心身医学会や他国の研究者との相互交流などを通して多くの心身医学的知見を得た. 日本では厚生労働省研究班, 日本線維筋痛症学会や研究会, 患者会が設立され, それぞれに心身医学的視点が重要視されるなど, 国際的にもユニークな展開をみせているが, これらの成果の国外への情報発信は十分とはいえない. 今後はより多くの研究者の参画を得て日本の心身医学の国際化を図りたい.
著者
今津 芳恵 松野 俊夫 村上 正人 林 葉子 杉山 匡
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.263-270, 2016

心療内科に通院中の患者233名を対象に, ストレス反応を測定するPublic Health Research Foundationストレスチェックリスト・ショートフォーム (以下, PHRF-SCL〔SF〕) と自己成長エゴグラム (以下, SGE) を実施し, その関連を検討した. SGEの得点のクラスター分析から, 「A高位Wタイプ」, 「A低位Mタイプ」, 「FC低位Vタイプ」, 「NP高位 ‘ヘ’ タイプ」が抽出された. それぞれについて, PHRF-SCL (SF) の下位尺度ごとに偏差値を算出し, 一元配置分散分析により平均の差を検討した. その結果, 「FC低位Vタイプ」はストレス反応が他のタイプより高く, 「NP高位 ‘ヘ’ タイプ」は他のタイプより低かった. PHRF-SCL (SF) とエゴグラムとの関連が認められ, その関連性は先行研究と一致するものであり, PHRF-SCL (SF) の構成概念妥当性の一端が検証された.
著者
赤星 俊樹 吉澤 孝之 岩城 基 村上 正人 高橋 典明 橋本 修
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.215-219, 2009-12-28 (Released:2016-10-07)
参考文献数
11

COPDにおける終末期の定義は,明確に示されていない.一般に,終末期とは「疾患の進行に伴う症状に対して治療は可能であるが,原疾患に対しては治療による効果が期待できない状態」と定義され,およそ余命6ヵ月と予測される時期である.COPDの終末期では,高度な呼吸困難や運動耐容能の低下がみられ,医学的のみならず社会的問題をも含有することが多い.本稿では,こうした諸問題と終末期医療や緩和ケアの重要性について述べたい.