著者
芹澤 愛
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.230-233, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
24

アルミニウム合金は,カーボンニュートラル実現の観点から輸送機器をはじめとした各種部材への展開が期待される軽量金属材料であるが,用途拡大のためにはさらなる高強度化ならびに高耐食化が不可欠である.本稿では,筆者がごく最近開発した,水蒸気のみを利用した環境負荷の低い新しい表面処理技術である水蒸気プロセスについて解説する.水蒸気プロセスでは,アルミニウム合金表面に水酸化物結晶を緻密に形成することでバリヤ性が発現し,耐食性が向上する.これと同時に,水蒸気の熱エネルギーを活用し,アルミニウム合金を組織制御することで析出強化により高強度化が実現する.水蒸気プロセスによって実現する,このような興味深いアルミニウム合金の多機能化手法について紹介する.