著者
小山 伸一 行岡 秀和 森本 修 新藤 光郎 西 信一 前田 均 藤森 貢 若杉 長英
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.235-239, 1996-07-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
11

自殺目的で燃料用アルコール(メタノール)を服用し,脳死に陥った症例を報告する。患者は42歳の男性で,腹痛と嘔吐で発症し高度代謝性アシドーシスが認められ,昏睡状態に陥ったため気管内挿管後に当院ICUに入室した。入室時,高浸透圧血症と浸透圧ギャップの増加が認められ,頭部コンピューター断層撮影(computed tomography; CT)上両側レンズ核部に低吸収域が認められた。持続血液透析により代謝性アシドーシスの改善が認められたが患者は脳浮腫を生じ,脳死になった。ICU入室7時間後の血中メタノール濃度は173mg・dl-1であった。脳死になった原因として,メタノールおよびその代謝産物の直接作用ならびに脳浮腫による可能性が考えられる。