著者
高津 光洋 福永 龍繁 中園 一郎 吉岡 尚文 西 克治 前田 均 三澤 章吾
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

わが国では,乳幼児の突然死に対し安易に乳幼児突然死症候群(SIDS)と診断され,特に剖検せず,あるいは剖検所見を無視したSIDS診断も多い.このような状況から脱却するために,本研究班は文科省科研費の補助のもとに,平成11年3月「SIDS診断の法医病理学的原則に関する提言」を報告した.今回の目的はこの提言による乳幼児死亡例の死因診断を検証し,提言内容を再検討することにある.前回各大学から収集した乳幼児突然死剖検例307例中122例がSIDS群と診断されていたが,提言に従ってretrospectiveに再検討した結果,SIDSと診断せざるを得なかったのは14例であった.これは全対象例307例の5%,SIDS群の11.5%にすぎなかった.提言前後の乳幼児死亡の推移を厚労省人口動態統計で検討したところ,SIDSはほぼ半減していた.乳児死亡自体が減少しているものの,安易なSIDS診断に対して提言が警鐘となったと思われる.次に乳幼児剖検例における死因診断において,客観的根拠となり得る診断指標について,剖検所見のみならず中毒学的,病態生理・生化学的,微生物学的検査を含め検討し,窒息死と肺感染症の死因診断根拠を提示した.更に,臓器重量,溢血点の有無等の剖検所見について死因別に検討し,死因診断と死亡過程の病態分析のための客観的指標として病理形態的所見の定量分析が有用であることを示唆した.更に,実際の裁判例において提言内容を積極的に鑑定や意見書等で主張してきた.又,乳幼児急死例における虐待,揺さぶり症候群,ライ症候群など死因判定の難しい疾患についても注意を喚起した.わが国では乳幼児死亡例の剖検例が少なく,本研究年度を越えて提言の更なる検証と死因診断の客観的根拠に関する研究の必要性を認識している.
著者
西村 善博 前田 均 田中 勝治 橋本 彰則 橋本 由香子 横山 光宏 福崎 恒
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.795-801, 1991-07-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
18
被引用文献数
8

加齢による呼吸筋力の変化を検討するため, 成人116名 (男性57例, 女性59例) を対象に, 座位にて全肺気量位での呼気最大口腔内圧 (PEmax) 及び残気量位での吸気最大口腔内圧 (PImax) を測定した. 口腔内圧測定の至適回数に対する予備的検討で, 最低3回測定すれば再現性のよい値が得られたので, 3回測定での最大値を用いた. PEmaxの平均値は, 男女それぞれ123.6cmH2O及び79.0cmH2O, PImaxの平均値はそれぞれ98.4cmH2O及び71.9cmH2を示し, 性別間で有意差を認めた. PEmax及びPImaxは男女とも年齢との間に有意な負の相関を認めた. PEmaxは全肺気量と有意な正相関を, PImaxは残気率と有意な負の相関を認めた. 残気率は加齢による増加を認めた. 以上の呼吸筋力の検討より, 加齢による吸気筋力低下の原因の一つに経年的な残気率増大が関与している可能性が示唆された. 一方, 呼気筋力の経年的筋力低下は肺機能諸量と明確な関係を示さず, 栄養状態, 全身的筋力低下など多因子の関与が推測された. 最大口腔内圧測定は最低3回行えば再現性のある値の得られることが確認された.
著者
小山 伸一 行岡 秀和 森本 修 新藤 光郎 西 信一 前田 均 藤森 貢 若杉 長英
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.235-239, 1996-07-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
11

自殺目的で燃料用アルコール(メタノール)を服用し,脳死に陥った症例を報告する。患者は42歳の男性で,腹痛と嘔吐で発症し高度代謝性アシドーシスが認められ,昏睡状態に陥ったため気管内挿管後に当院ICUに入室した。入室時,高浸透圧血症と浸透圧ギャップの増加が認められ,頭部コンピューター断層撮影(computed tomography; CT)上両側レンズ核部に低吸収域が認められた。持続血液透析により代謝性アシドーシスの改善が認められたが患者は脳浮腫を生じ,脳死になった。ICU入室7時間後の血中メタノール濃度は173mg・dl-1であった。脳死になった原因として,メタノールおよびその代謝産物の直接作用ならびに脳浮腫による可能性が考えられる。
著者
要田 洋江 前田 均
出版者
大阪市立大学
雑誌
人権問題研究 (ISSN:1346454X)
巻号頁・発行日
no.2, pp.123-132, 2002

1. はじめに : 今や、近代科学における新技術研究開発の主たるターゲットの1つは医療分野にあり、そこでの医療技術開発は、臓器置換・補填や遺伝子治療などに示されるように"人体改造"を指向している。しかも、結果としてもたらされたバイオテクノロジーや医療技術の先鋭化ともいうべき医学・医療の加速度的進歩は、社会に大きな期待を生み出すとともに大きな不安を巻き起こしている。……
著者
前田 均
出版者
天理大学人権問題研究室
雑誌
天理大学人権問題研究室紀要 (ISSN:13440802)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.23-33, 2000-03 (Released:2009-03-01)
著者
前田 均 八幡 知之 里内 美弥子 竹中 和弘 横山 光宏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.1282-1289, 1995
参考文献数
33
被引用文献数
3

卵白アルブミン感作モルモットに対する抗原暴露による気道収縮反応に及ぼす低分子ヘパリン (LMWH) の効果について検討した. ハートレー系モルモットを用い, 卵白アルプミン感作による二相性喘層, モデルを作成し, 呼吸抵抗を経時的に測定し気道反応性を検討した. またBALF, 組織学的検討を加えた. LMWH吸入により, 抗原暴露後の呼吸抵抗は, 生食吸入に比べ, 即時型気道反応においては, 8分を除く1分から9分, また遅発型気道反応においては4時間目および7時間目以降24時間目まで有意な抑制を認めた. また即時型気道反応において, 最大収縮に至る時間も5.3±4.6分から9.6±4.3分へと有意な延長をきたした. LMWH吸入は, BALFでは生食吸入に比べ好酸球の減少 (8.2±0.4%→5.5±1.2%, p<0.01), また組織学的検討でも好酸球数の浸潤の減少(155±15.8→71.0±7.3, p<0.01)を認めた. 以上より, LMWHは抗原暴露後気道収縮反応および好酸球の浸潤を抑制し, 気管支喘息に対する防御因子として重要であると考えられた.
著者
佐藤 由美 玄 善允 弘谷 多喜夫 佐野 通夫 李 正連 宮崎 聖子 磯田 一雄 仲村 修 鈴木 常勝 前田 均 上田 崇仁
出版者
埼玉工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

日本統治下の台湾や朝鮮では、学校教育を受けることのできる子どもたちは限られていた。その機会に恵まれた子どもたちでさえも、その期間は限定されていたが、子どもたちは学校以外でもさまざまな学びを経験したはずである。そこで私たちは学校教育以外の場で、子どもたちがどのような学びを経験したのか、その様相に焦点を当て多様性を明らかにした。例えば、社会教育(伝統教育機関、夜学や国語保育園など)、サブカルチャー(児童文学、紙芝居、ラジオ、労働、遊び)の中での彼らの学びである。資料としては、当時の政策文書や新聞雑誌、インタビュー調査の記録を用いた。
著者
石川 隆紀 前田 均 道上 知美 富田 正文
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,覚醒剤・向精神薬乱用者の中枢神経系および内分泌系組織について,アルツハイマー病やクロイツフェルトヤコブ病などの神経変性疾患で増加することが知られているアポリポプロテインE4,アポリポプロテインBおよびアポリポプロテインJの発現動態を免疫組織化学的手法および分子生物学的手法(mRNA発現)を用いて解析した.その結果,部位による発現の相違はあるものの,火災,熱中症および凍死などの異常温度環境下においてアポリポプロテインの発現に加え,薬物乱用者におけるアポリポプロテインの発現が明らかとなった.