著者
岡本 亜紀 國方 弘子 茅原 路代 渡邉 久美 折山 早苗
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.5_79-5_87, 2008-12-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
42

本研究は,精神疾患患者を支える家族を対象に,生活困難を抱える家族のストレス反応の軽減と患者の病状悪化を予防するための看護実践の基礎資料を得ることを目的として,患者受容,生活困難度,対処行動,批判的態度の因果関係を検討した。結果,中国四国圏内に住む150名の家族から質問紙調査の回答が得られ,患者受容とストレス対処行動(情緒優先対処行動)は,生活困難度を介して間接的に患者への批判的態度を規定するとともに,患者受容は直接的に批判的態度へ影響する因果モデルが支持された。決定係数は,生活困難度に対し0.34,批判的態度に対し0.47であり,生活困難度の分散の34%が患者受容と情緒優先対処行動によって説明でき,批判的態度の分散の47%が患者受容,情緒優先対処行動,生活困難度によって説明できることが示された。以上のことから,統計学的な根拠に基づいた家族へのストレス支援の手がかりが示唆された。
著者
茅原 路代 國方 弘子 岡本 亜紀 渡邉 久美 折山 早苗
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1_91-1_97, 2009-04-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
31

本研究は,デイケアに通所し地域で生活する統合失調症患者83名を対象に,居場所感とQOLの2変数の関連を明らかにすることを目的とした横断研究である。調査項目は,日本語版WHOQOL-26,精神障害者の居場所感尺度(3下位尺度からなる2次因子モデル),個人特性で構成した。想定した居場所感とQOLの因果関係モデルを共分散構造分析を用いて検討した結果,適合度指標は統計学的な許容水準を満たし,モデルはデータに適合した。居場所感が大きいことは,より良いQOLであることが明らかになり,その寄与率は44%であった。このことから,在宅生活をする統合失調症患者がより良いQOLを獲得するためには,彼らの居場所感を高める支援が有効であることが示唆された。
著者
國方 弘子 茅原 路代 大森 和子 神宝 貴子 岡田 ゆみ
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1_37-1_44, 2006-04-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
21

地域生活をしながら精神科デイケアまたは作業所に通所している統合失調症患者の生活への思いとその影響要因を明らかにすることを目的として,グラウンデッド・セオリー法による質的帰納的研究を行った。結果,《充実感がある》,《病気が安定している》,《自分をこれでいいと思える(自尊心)》,『折り合いをつける』,《自分を受けとめてくれる》,《居場所がある》,《心のよりどころがある》の7個のカテゴリーが抽出された。彼らは《充実感がある》生活を送っていることが見いだされ,『折り合いをつける』ことと《自分をこれでいいと思える(自尊心)》ことは,《充実感がある》生活に至るには必要であり,《病気が安定している》ことは《充実感がある》生活の基盤となっていた。本結果は,在宅生活をする統合失調症患者の生活の質を維持・向上するための看護支援のあり方に寄与できることが示唆された。
著者
渡邉 久美 折山 早苗 國方 弘子 岡本 亜紀 茅原 路代 菅崎 仁美
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.2_85-2_92, 2009-06-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
15

訪問看護ステーションにおける家族員を含めた精神障害による対応困難事例の実態と,精神障害者との関わりにおける訪問看護師の支援ニーズを明らかにした。A県の訪問看護ステーション116施設を対象とし,48施設から有効回答を得た。対応困難事例の経験の有無を質問紙郵送法にて行い,さらに,協力の得られた6施設10名の訪問看護師から対応困難事例13事例の概略と支援ニーズについて面接を行った。調査時点での対応困難事例は,利用者では14施設(29.2%),家族員では12施設(25.0%)に報告があった。また,訪問看護師には【対象の捉えにくさによる不安】があり,【状況に応じた効果的対応方法を知ること】と【看護行為の保証者の要望】という支援ニーズがあった。具体的な対応法の検討や,訪問看護師の関わりを支持する場として,精神科専門職らによる相談窓口やネットワークの構築が一策であると考える。