- 著者
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茶園 梨加
- 出版者
- 九州大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2008
最終年となる本年度は、今まで行ってきた北部九州のサークル誌に関する調査を続けながら、「サークル村」の一要素である水俣の問題について調査、考察、研究報告を行った。報告者(茶園梨加)は、本年度始めより「サークル村」同人であった石牟礼道子の『苦海浄土-わが水俣病』に関する調査を精力的に行ってきた。日本近代文学会秋季大会の研究発表が決定して以降は、熊本県立図書館(熊本市)や熊本学園大学水俣学研究センター(水俣市)、水俣病歴史考証館(水俣市)を中心に調査を行った。『苦海浄土』については、これまでさまざまな先行研究があるが、「サークル村」に初出「奇病」が掲載されたことを踏まえた研究は少ない。よって、報告では「サークル村」の存在がいかに石牟礼道子の創作過程に影響を及ぼしたのか、その過程を明らかにした。また、同内容をさらに発展したものを、「サークル村」終刊50周年記念集会(中間市)にて報告した。会では、森崎和江をはじめとした「サークル村」同人であった当事者たち、諸研究者たちと意見交換を行い、充実した報告となった。また、これまで資料調査を行った日炭高松の文化運動についても調査を進めた結果、資料発掘がまたれていた「月刊たかまつ」の総目次を「九大日文」16号に発表することができた。これは、研究代表者が一、二年目に行った法政大学大原社会問題研究所での調査に加え、遺族への聞き取りを実施した結果である。以上が本年度の主な研究成果である。より幅広く研究成果を報告することができ、有意義な年度であった。