著者
荒井 由美子 田宮 菜奈子 矢野 栄二
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.497-503, 2003-09-25 (Released:2011-02-24)
参考文献数
23
被引用文献数
96 101

要介護高齢者を介護する者の介護負担を客観的に測定することは極めて重要である. 本研究の目的は, 我が国で頻用されている Zarit 介護負担尺度日本語版 (J-ZBI) の短縮版を作成することである.鹿児島県肝属郡内の6町の在宅要介護高齢者1,713名を対象に, 訪問調査を実施した. この1,713名のうち, 同居家族が主介護者であった735名に対しては, 訪問時に主介護者の性, 年齢, 介護負担 (J-ZBI) に関する調査も行った.短縮版の項目の選定にあたっては, 因子分析 (最尤法, Varimax 回転) を行った. 因子分析の結果, 固有値1以上の因子が4つ抽出された. 固有値の大きさと原版の因子構造を参考に, 第一因子 (Personal strain), 第二因子 (Role strain) から, 因子負荷量の高い項目を, それぞれ5項目, 3項目を選択し, J-ZBI短縮版 (J-ZBI_8) とした. J-ZBI_8の内的整合性を確認するために, Cronbach's αを計算したところ, 0.89であり, 下位尺度 Personal strain, Role strain それぞれの Cronbach's αの値は0.87, 0.82であった. また, J-ZBI_8の併存的妥当性を検討するために, J-ZBI_8とJ-ZBIおよび項目22との相関を検討したところ, それぞれr=0.93, 0.68であった (共に, p<0.001). さらに構成概念妥当性を検討すべく, 介護で困っていると答えた介護者のJ-ZBI_8得点と困っていないと答えた介護者とのJ-ZBI得点を t-test により, 比較したところ前者が9.31点 (SD=7.19), 後者が3.45点 (SD=4.57) であり有意差がみられた(p<0.001).J-ZBIの短縮版, J-ZBI_8の信頼性, 妥当性は原版と同様高いものであり, 充分に実用に耐えうるものと確認された.
著者
豊島 泰子 鷲尾 昌一 高橋 裕明 井手 三郎 荒井 由美子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.390-398, 2012 (Released:2014-04-24)
参考文献数
15

目的 新型インフルンザ(A/H1N1)流行シーズンにおける小中学校の児童•生徒のインフルエンザ罹患状況,インフルエンザワクチン接種状況,保護者のワクチン接種行動について検討する。方法 三重県の一学校法人学園に通学する小学生(440人),中学生(493人)の保護者に対し,2010年 9 月,無記名の調査用紙を学級担任より,児童•生徒に配布し,自宅で,保護者に児童•生徒に関する情報を記入,担任に提出してもらった。2010/2011シーズンにワクチン接種予定の児童•生徒と非接種予定の児童•生徒の保護者の回答を比較した。結果 2009/2010シーズンでは小学生の70.8%,中学生の55.2%の児童•生徒が,季節性•新型ワクチンのいずれかまたは両方を接種していた。2010/2011シーズンでは小学生の72.4%,中学生の55.8%が,ワクチン接種をする予定であった。2009/2010シーズンでは55.0%の児童•生徒がインフルエンザに罹患し,その97.2%が抗インフルエンザ薬の投与を受けていた。2010/2011シーズンに子どもにワクチン接種をする予定の保護者は非接種予定の保護者に比べ,2009/2010シーズンに子どもがワクチン接種をした割合,子どもが風邪をひきやすい体質である割合,子どもに兄弟姉妹がいる割合,2009/2010シーズンに保護者自身がワクチン接種をした割合が多かった。一方,2009/2010シーズンの子どものインフルエンザ罹患や同居家族のインフルエンザ罹患,高齢者の同居はワクチン接種意向とは関連を認めず,保護者の意識や保健行動が児童•生徒のワクチン接種と関係していた。保護者の64.9%が学校で,児童•生徒へのインフルエンザワクチン接種が行われることを希望していた。結論 新型インフルエンザの流行は,翌シーズンである2010/2011シーズンにおける児童のインフルエンザワクチン接種予定者率の上昇につながっていた。小学生の保護者は,子どもが風邪を引きやすい体質がある場合はワクチン接種を行うと考えていた。  また,保護者の64.9%が学校でワクチン接種が行われることを希望していた。子どものワクチン接種意向は2009/2010シーズンの罹患とは関係なく,保護者自身のワクチン接種と関係しており,接種率の向上には保護者の意識を変えるか,保護者自身が子どもを医療機関に連れて行かなくてもインフルエンザワクチン接種ができるようにすべきと考えられた。