著者
荒木 博孝
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.1477-1491, 1981-11-20
被引用文献数
2

前立腺肥大症患者100例と年齢および居住地を一致させた正常対照者100例を対象に,独自の質問用紙を用いて,インタビュー方式による疫学的調査を行い,matched pair analysisを用いたcase control studyを行った.この結果,前立腺肥大症患者における疫学上重要な特徴は,つぎのごとくであると考えられた.すなわち,社会経済的にはより学歴が高く,年収もそこそこ多く,環境汚染のない職場で働いている.結婚状況や性生活においては,多くの子供を持ち,より早く第1回射精を経験し,1ヵ月以上のインポテンツの経験を持たない.すなわち,精力的な性生活のパターンを有している.また,淋疾,尿道炎,前立腺炎,および梅毒といった慢性尿路感染症に,より多く罹患している.食生活においては,毎日肉類を食べ,牛乳または山羊乳を飲み,緑黄色野菜や漬物の摂取量がより少ない,すなわち,西欧風の食生活のパターンを有している.
著者
三品 輝男 渡辺 泱 荒木 博孝 都田 慶一 藤原 光文 小林 徳朗 前川 幹雄
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.1256-1279, 1981-10-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
63
被引用文献数
1 1

前立腺癌の高危険度群を知る目的で, 学歴, 職業, 収入, 信仰, 結婚状況, 性生活, 食生活, 身体状況, 既往歴および家族歴を重点調査目標とする111項目よりなる独自の前立腺癌疫学調査用質問用紙を作製し, インタビュー方式により, 前立腺癌100例と, それらの症例に年齢と現住所を一致させた正常対照者100例とを対象に, matched pair analysis による case-control study を行つた. その結果, 前立腺癌群において正常対照群よりリスクが高いと考えられたのは, 次の諸点であつた (危険率10%以内のものにはアンダーラインを付さず, 危険率5%以内のものにはアンダーラインを付した).1) 職業については管理的職業に従事せず, 軍隊歴がなく, 染料を取り扱つたことがある. 2) 収入については, むしろ低い. 3) 結婚状況については, 早婚で, 結婚継続年数が長い. 4)性生活については, 最初の性交年齢が若く, 青壮年期の性交回数は多いが, 老年期に入ると性交回数が少なく, 性活動停止時期も早い.5) 食生活については, 魚介類はあまり摂らぬ西欧型の食事内容で, 緑黄色野菜の摂取が少なく, 香辛料や塩つぱいものを好む. アルコール, 喫煙はあまり関係がない. 6) 既往歴としては, 前立腺肥大症およびロイマの既往あり. 7) 学歴, 信仰, 身体状況および家族歴には特記すべきものはなかつた.すなわち前立腺癌の高危険度群は, 特に性生活と食生活に特異なパターンを有する人達であることが明らかになつた.
著者
豊田 和明 荒木 博孝
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.719-723, 1987-05

1)尿道炎症状を主訴として外来受診した160名の男性患者およびその性的パートナー22名に対して,抗クラミジアモノクローナル抗体を用いた直接鏡検法により,クラミジア感染症の細胞学的検索を行い,53名33%の男性患者,13名59%の女性患者にPAP陽性を認めた.2) ELISA法による血清抗体測定では,PAP陽性29例中8例26%に抗体価陰性を,PAP陰性44例中7例15%に抗体価陽性を認めた.3)淋菌性および非淋菌性尿道炎のクラミジア感染の割合は,前者が36例中11例31%,後者が63例中29例46%であった.4) Minocycline 0.2 g/日またはdoxycycline 0.2 g/日によるクラミジア治療により,35例中23例66%にPAP法によるクラミジア抗原の陰性化を認めた.また平均投薬日数は50日であったThe PAP-immunocytochemistry using a monoclonal antibody against Chlamydia trachomatis was applied to male patients with clinically manifest urethritis and their female sex partners. In addition, serum levels of the antibody were determined by means of an ELISA system. Immunoperoxidase reactions were recognized on urethral scrapes in 53 (33%) out of 160 cases, and on endocervical specimens in 13 (59%) out of 22 sex partners of PAP-positive patients. In patients with gonococcal urethritis, an infection of C. trachomatis was revealed immunocytochemically in 11 (31%) out of 36 cases, and in 29 (46%) out of 62 cases with non-gonococcal urethritis. Following medication with 200 mg of minocycline or doxycycline per day, PAP staining became negative in 23 (66%) out of 35 cases. The levels of serum antibody against C. trachomatis were undetectable in 8 (26%) out of 29 PAP-positive cases, but positive in 7 (15%) out of 44 PAP-negative cases.