著者
荒井 祐司 都竹 正文 坂本 穆彦
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.109-114, 1997-03-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

組織学的に確定診断の得られた甲状腺低分化型乳頭癌13症例と甲状腺高分化型乳頭癌17症例の穿刺吸引細胞診標本より両型の細胞像を比較し, 低分化型の細胞学的特徴を明らかにすることを目的として検討を行った.低分化型の細胞学的特徴は, 1. 小集塊での出現が主で, 孤立散在傾向も認められる. 2. 集塊は, 細胞配列の乱れと重積性が強く, 一部には結合性の低下 (ほつれ) が認められる. 3. 核は高分化型より大型で楕円形が主体, 大小不同性が強い. 4. 同一標本上に, 高分化型の集塊の出現を認めることがある.また, 正常および良性濾胞上皮細胞, 高分化型, 低分化型との核の形状の比較を行った結果, 核の大きさ, 大小不同性, 核形 (核の丸さ) において濾胞上皮と高分化型および低分化型の間に有意差が認められ (t-検定), 核の形態からも鑑別が可能であることが示唆された.
著者
己斐 澄子 手島 英雄 南 敦子 片瀬 功芳 山脇 孝晴 星 利良 藤本 郁野 山内 一弘 荷見 勝彦 都竹 正文
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.1048-1053, 1994 (Released:2011-11-08)
参考文献数
9

閉経後の患者で, 細胞診で老人性変化が主体で一部にHPV感染を疑う所見を認めたが, 十分なHPV感染細胞所見を示さなかった8症例にエストロゲン (プレマリン) 負荷を施行した. 抱合型エストロゲン, プレマリン1.25mgを2週間経口投与した. 投与前は少数のkoilocyteやparakeratocyteを認めただけであったが, 投与後は, 炎症性背景が消失し, parakeratosis 100%(8/8), koilocytosis 75%(6/8), smudged様濃染核75%(6/8), giant cell 50%(4/8), multinucleation62.5%(5/8) の率でHPV感染に特徴的な細胞所見が出現した.HPV-DNAは, Southern blot法で5例を検索し, 100%(5/5) 陽性であった. ISH (in situ hybridization) 法で他の3例を検索し, 33%(1/3) がHPV-DNA陽性であった.エストロゲン投与は, 老人性膣炎と悪性細胞を鑑別するだけでなく, 老人性膣炎でのHPV感染診断に有用であった. 老人性変化, 老人性膣炎症例でHPV感染を示唆する細胞が出現している場合, エストロゲン (プレマリン) 投与により, さらにHPV感染細胞所見が明瞭となることがわかった.