- 著者
-
荻原 庸平
小林 辰至
- 出版者
- 日本理科教育学会
- 雑誌
- 理科教育学研究 (ISSN:13452614)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.2, pp.1-9, 2010-11-05
- 参考文献数
- 10
本研究は,小学校教員養成課程の学生を対象として,天文に関する体験や興味・関心が,天体の運行の理解に及ぼす影響を質問紙調査により検討することを目的とした。まず,天文に関する体験や興味・関心等を問う質問項目について因子分析を行うとともに,抽出された各因子の項目について体験の程度を得点化した。次に,天体の運行に関する理解の得点の上位群,下位群について平均値の差を検討した。その結果,以下のことが明らかとなった。(1)因子分析の結果,「天文に関する直接的体験」,「天文の授業に対する興味・関心」,「天文に関する間接的体験」,「立体的な絵を描く体験」の4因子を抽出した。(2)日没後に上弦の月が見える時の太陽と月の位置関係を問う問題の正答率は16.5%と低率である等,学生の天文に関する理解は極めて低かった。(3)天体の三次元的な位置関係の把握が必要な,月の満ち欠けに関する理解の平均得点は,因子「天文に関する直接的体験」と因子「天文の授業に対する興味・関心」において上位群が下位群よりも有意に高かった。(4)二次元的な動きに見える天体の日周運動に関する理解の平均得点は,因子「天文に関する直接的体験」及び因子「天文の授業に対する興味・関心」のいずれにおいても,上位群と下位群との間に有意差は認められなかった。