著者
河本 康介 山田 健人 小林 辰至 山田 貴之
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.585-598, 2022-03-31 (Released:2022-03-31)
参考文献数
41
被引用文献数
1 1

本研究の第一の目的は,「理科と数学の教科等横断的な学習」が「理数の関連性の意識化」,「学習方略」および「自己効力感」を媒介し,「理数学習の有用性」に影響を及ぼすと仮定した因果モデルに基づいた質問紙を作成し,「理科と数学の教科等横断的な学習の意義」を構成している諸要因の因果モデルを明らかにすることであった。さらに,理科と数学の好き嫌いと各要因の関連性を明らかにすることが第二の目的であった。質問紙調査を行った結果,第一の目的については,「問題解決への意識」,「関数的な見方・考え方」,「理数学習の有用性」,「理科における学習方略」,「理科学習での数学の必要性」,「数式化・数値化の意識」の6つの因子が理科と数学の教科等横断的な学習の意義として抽出された。また,重回帰分析とパス解析を行った結果,「関数的な見方・考え方」が,4因子(「問題解決への意識」,「理科における学習方略」,「理科学習での数学の必要性」,「数式化・数値化の意識」)を経由しながら「理数学習の有用性」に間接的に影響を及ぼしていることが明らかになった。さらに,第二の目的については,理科と数学の好き嫌いと各因子得点の比較検討から,「数式化・数値化の意識」において,Ⅱ群(数学は好きだが,理科はあまり好きではない)とⅢ群(理科は好きだが,数学はあまり好きではない)との間で有意な差が見られた。理科学習において,「数式化・数値化の意識」を高めるために,自然の事物・現象や実験結果を数学的な知識・技能を活用しながら定量的に分析・解釈し,グラフ化したり公式や規則性を導いたりする活動の必要性が示唆された。
著者
星野 敬太郎 光永 伸一郎 小林 辰至
出版者
一般社団法人 日本生物教育学会
雑誌
生物教育 (ISSN:0287119X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.83-90, 2013-01-15
参考文献数
9

<p>発芽時における,貯蔵デンプン分解の仕組みを学習・理解するための実験教材の開発を試みた.さまざまな植物の発芽種子を対象に分析を加えた結果,ソバを用いた実験教材を作成することができた.本教材においては,デンプン分解に伴うグルコース濃度の変動とその要因となるアミラーゼ活性について,尿糖試験紙法とデンプン試験紙法を用いて容易に確認することができる.すなわち,両者の関係について自ら仮説を立てた後,実験を通してそのことを検証できるわけであり,探究活動を取り入れた教材としての活用に期待がかかる.また,本教材は,発芽の生理についてグルコースを中心としたエネルギー代謝(糖代謝)の側面からとらえたものである.よって,本教材により,形態的変化の観察が中心である発芽の学習を,生化学的要素を含むより高度な内容へと発展できるものと考える.</p>
著者
荻原 庸平 小林 辰至
出版者
日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.1-9, 2010-11-05
参考文献数
10

本研究は,小学校教員養成課程の学生を対象として,天文に関する体験や興味・関心が,天体の運行の理解に及ぼす影響を質問紙調査により検討することを目的とした。まず,天文に関する体験や興味・関心等を問う質問項目について因子分析を行うとともに,抽出された各因子の項目について体験の程度を得点化した。次に,天体の運行に関する理解の得点の上位群,下位群について平均値の差を検討した。その結果,以下のことが明らかとなった。(1)因子分析の結果,「天文に関する直接的体験」,「天文の授業に対する興味・関心」,「天文に関する間接的体験」,「立体的な絵を描く体験」の4因子を抽出した。(2)日没後に上弦の月が見える時の太陽と月の位置関係を問う問題の正答率は16.5%と低率である等,学生の天文に関する理解は極めて低かった。(3)天体の三次元的な位置関係の把握が必要な,月の満ち欠けに関する理解の平均得点は,因子「天文に関する直接的体験」と因子「天文の授業に対する興味・関心」において上位群が下位群よりも有意に高かった。(4)二次元的な動きに見える天体の日周運動に関する理解の平均得点は,因子「天文に関する直接的体験」及び因子「天文の授業に対する興味・関心」のいずれにおいても,上位群と下位群との間に有意差は認められなかった。
著者
山田 貴之 寺田 光宏 長谷川 敦司 稲田 結美 小林 辰至
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.219-229, 2014-07-08 (Released:2014-08-22)
参考文献数
18
被引用文献数
2

本研究の目的は, 児童自らに変数の同定と仮説設定を行わせる指導が, 燃焼の仕組みに関する科学的知識の理解と, 燃焼現象を科学的に説明する能力の育成に与える効果について明らかにすることである。この目的を達成するために, 第6学年「ものの燃え方と空気」において, “The Four Question Strategy”に基づく「仮説設定シート」(4QS)を用いた実験群37人と, 用いなかった統制群37人を対象とした授業実践及び学習前後の質問紙調査の分析を行った。その結果, 実験群の方が, 燃焼の仕組みに関する科学的知識を高い水準で理解し維持できることが明らかとなった。また, 燃焼現象を科学的に説明する能力の育成にも有効であることが示唆された。
著者
栗原 淳一 益田 裕充 濤崎 智佳 小林 辰至
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.19-34, 2016-07-12 (Released:2016-08-09)
参考文献数
24
被引用文献数
3 3

本研究は, 中学校第3学年の「月の満ち欠け」と「金星の満ち欠け」の学習において, 地球と天体の位置関係を作図によって位相角でとらえさせる指導が, 満ち欠けの空間認識的な理解と満ち欠けを科学的に説明する能力の育成に与える効果について明らかにすることを目的とした。そこで, 実験群では地球と天体の位置関係を作図によって位相角でとらえた後に, 満ち欠けの現象を説明する仮説を立てさせて, モデル実験で検証させた。一方, 統制群では作図を行わせないで, 同様の学習に取り組ませた。そして, それぞれの群の満ち欠けの空間認識的な理解度と科学的に説明する能力を質問紙調査によって比較検討した。その結果, 統制群に比べ, 実験群の方が満ち欠けの空間認識的な理解度が有意に高かった。また, 満ち欠けを科学的に説明できる生徒も有意に多かった。このことから, 作図によって地球と天体の位置関係を位相角でとらえさせる指導は, 満ち欠けの現象を空間認識的に理解させたり科学的に説明したりする能力の育成に有効であることが示唆された。
著者
小林 辰至 永益 泰彦
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.185-193, 2006-09-10 (Released:2017-06-30)
参考文献数
8
被引用文献数
8

Since scientific research begins with the setting of hypotheses, students at teachers colleges must to design hypotheses learn during teacher training. However, no effective generalized instruction methods for hypothesis setting have been developed. In fact, no such instruction has ever been carried out. In this study, we investigated the actual involvement of elementary school teacher candidates in inquiry into natural science and related fields in their elementary, junior and senior high school days. At the same time, we developed a method to design a hypothesis based on the technique of the "four question strategy" in order to practice this method using these teacher candidates, and demonstrated the following findings: (1) With the advancement from elementary and junior high school to senior high school, the percentage of elementary school teacher candidates who liked the subject of natural science tended to decline. In particular, during their senior high school days, half of such students disliked this subject. (2) The frequencies of observations and experiments tended to decrease, as seen in their low rate of liking for natural science when they advanced to higher schools. At high school, the frequencies of observations and experiments were only 20.3% even when both "high" and "somewhat high" were combined. This figure was extremely low compared with those of elementary and junior high schools, which is problematic. (3) The percentage of students who had gone through a series of the experiences of science learning was under 10%. (4) Two 60-minute sessions were conducted using the instruction method and worksheet developed through the "four question strategy." As a consequence, more than 90% of the students responded by saying "well understood," and "somewhat understood." From this outcome, we concluded that the newly proposed instruction method and worksheet were highly effective for the students to acquire a means to design hypotheses.
著者
五島 政一 小林 辰至 熊野 善介 下野 洋 品川 明 平田 大二 岡本 弥彦 三宅 征夫 鳩貝 太郎 立田 慶裕 田代 直幸 笹尾 幸夫 清原 清一 日置 光久 加納 誠 藤岡 達也 田口 公則 小川 義和 市川 智史
出版者
国立教育政策研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

子どもが主体的に学び、科学を好きになる教育実践プログラムを多数開発した。そして、その教育システムを開発するために、指導者である教の資質・能力を育成する生涯学習プログラムのモデルを開発した。
著者
荻原 庸平 小林 辰至
出版者
日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.43-56, 2010-03-03
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究は,初等教員養成課程の学生を対象として,新しく開発した月の運行モデル教材と観測を組み合わせた実践を行い,月の見え方の理解への効果を検討したものである。実践の内容は2つである。1つは月の定時観測の記録であり,学生自身に月の満ち欠けの様子を2週間にわたって記録させた。もう1つは新しく開発したモデル教材を使用した学習である。実践の前後で月の見え方の理解を問う質問紙調査を行った。その結果,以下のことが明らかとなった。(1)「見える月の形が,日によってちがっている理由」について,「月の公転」及び「太陽光の反射」の2つの観点を含めて記述できた学生の割合は,実践前に比べ有意に増加した。(2)「日没後,満月が見えるのはどの方角か」「日没後,三日月が見えるのはどの方角か」「日没後,上弦の月が見えている時の太陽と月の位置関係」の正答率は,いずれも実践前に比べ有意に増加した。(3)新しく開発した月の運行モデル教材と観測を組み合わせた実践を通して,初等教員養成課程学生の月の見え方に関する理解を改善できた。