著者
荻本 快
出版者
相模女子大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

境界性パーソナリティ障害(BPD)への効果的な治療法が、内省機能(メンタライジング)に基づく治療として考案され、世界的に注目されている。内省機能とは、自己と他者の心理状態を振り返る能力のことである。内省機能を測定する質問紙であるReflective Functioning Questionnaire (RFQ)がFonagyらによって開発され多くの言語で翻訳されているが、日本語版は開発されていない。本研究の目的はRFQの日本語版の開発および妥当性と信頼性の検討である。RFQを日本語に翻訳し、BPDを対象として、因子構造、内的整合性、構成概念妥当性を検討する。
著者
荻本 快
出版者
国際基督教大学
雑誌
国際基督教大学学報. I-A 教育研究 = Educational Studies (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.81-88, 2014-03-31

父親と幼児によるRough-and-Tumble Play(RTP:乱闘遊び)は,幼児が自らの攻撃性を制御する能力の発達に寄与することが示唆されてきた。本論は,父子のRTPに関する幼児の発達理論に基づき,介入プレイ観察法による事例検討をもとに理論的考察を行うことで,父子のRTPにおける幼児の自己制御の発達要件について,その変数間関係を考察した。その結果,RTPにおいて優位性を保つ父親が攻撃性を制御する態度と行為を示し,それを幼児が模倣することで,攻撃性の制御の内在化を促進する父子の協調が生じることが見出された。そして,幼児の攻撃性の制御が安定化する過程で,RTP中に幼児が自らの限界を超えようと挑戦することと,それに対する父親からの賞賛と誇りの表現によって幼児の父親への同一視が強化されることが考察された。
著者
荻本 快
出版者
国際基督教大学
雑誌
教育研究 (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
no.59, pp.169-176, 2017-03

この試論では,日本の被爆トラウマが世代間伝達していく構造と力動に関する論考を行った。日本の被爆トラウマが世代間を伝達していく時には,否認を基盤として,次の世代への依存と投影同一視が起きることや,世代間の断絶や生存者同士の分裂によって,無意識的にトラウマが伝達することを論じた。最後に心理療法における治療課題を提示した。This essay attempted to discuss the structure and dynamism of transgenerational transmission of Japanese atomic bomb trauma. When atomic bomb trauma transmits, 1) dependence and projective identification toward next generation, 2) disconnection of generations and split between survivors occur. This happens based on an ego function of denial, and thus psychological trauma transmits unconsciously. At the end, therapeutic hypothesis of psychotherapy and tasks for conducting future research was showed.