- 著者
-
菅井 清美
- 出版者
- お茶の水女子大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1990
20歳から64歳の年齢の異なる被験者8名を用いて、着用衣服素材の身体局所の皮膚温および衣服気候におよぼす影響を検討した。環境温度34℃、湿度45%、気流0.1m/secに調整した人工気候室内で、環境湿度のみを変化させた安静座位実験を行なった。着用衣服は綿/ポリエステルの二層構造からなるトリコット布で作製したシャツとズボンで肌側への着用の仕方をかえて、環境湿度変化の影響を比較した。実験開始約1時間前に人工気候室に入室した被験者は約10分間安静の後、裸体と下着の重量を測定し、シャツとズボンを着用した。温湿度センサ-と購入した皮膚温測定センサ-を装着後、ベッドスケ-ル上の椅子に安静座位状態をとった。実験時間は120分で、20分後に環境湿度を70%にセット上昇させ、70分に再び45%にセット下降させた。各センサ-を購入したサ-ミスタ温度デ-タ収録装置とさらにパ-ソナルコンピュ-タに接続して1分ごとに皮膚温と衣服気候値を得た。本実験環境は比較的暑く、環境湿度を上昇させることによって非常に蒸し暑くなり、間接的な身体加熱の状態となる。多量の発汗の後、環境湿度を低下させると汗の蒸発はその部位から熱を奪い、冷却する。身体から環境への放熱は、発汗とともに体深部から末梢部への血流の増加によって行われ、いずれも皮膚温に大きな影響を与える。皮膚温測定6部位のうち、躯幹部と末梢部をそれぞれ3部位ずつ測定した。初期安静時の皮膚温を放射状グラフで比較した結果、高齢者は躯幹部より末梢部の方が高く、若年者は躯幹部の方が高かった。高齢者の熱に対する耐性が若年者より小さいという事実は、こうした環境に対する生理的な適応からきている可能性が示唆された。素材の比較では綿側を肌側にしたほうが発汗後の温度低下は大きかった。購入したデ-タ収録装置は多点測定ができるので、測定点をふやして高齢者の生理変化を追うつもりである。