著者
菅原 布寿史
出版者
河原学園 人間環境大学
雑誌
人間と環境 (ISSN:21858365)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.117-142, 2011

徳川・五島本の構図は、絵具が剥落・変色した現状では形式的で静的なものと見られてきた。しかし、現在は最新の復元模本を参照することにより、当時の絵師がより優れた物語の視覚化を試行錯誤して生み出したダイナミックな構図を読み取ることができる。本稿では、徳川・五島本の内建造物が描かれた十八作品を分析。結果として、二分割した画面に主要なモチーフを配置することで物語内容を視覚的に表現した〈対置的スタティクス〉、様々な動勢が影響し合って動的な運動感で画面内を満たし、ドラマティックなインパクトが感性に訴えかける〈有機的ダイナミクス〉、そして両者の中間的な構図に分類した。そして、〈有機的ダイナミクス〉の構図である〈柏木グループ〉八作品の明度による視覚的刺激の強弱を基準にしたダイアグラムを作成し、ダイナミクスのメカニズムを分析する。
著者
菅原 布寿史
出版者
人間環境大学
雑誌
人間と環境 電子版 (ISSN:21858373)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.46-70, 2012-02-29

第I部では徳川・五島本の構図を分析し、二分割した画面に主要なモチーフを配置することで物語内容を視覚的に表現した〈対置的スタティクス〉、様々な動勢が影響し合って動的な運動感で画面内を満たし、ドラマティックなインパクトが感性に訴えかける〈有機的ダイナミクス〉に分類した。第II部では徳川・五島本の色彩とテクスチュアが物語表現にどのような効果を与えているのかを分析する。色彩は、強調色の配置が物語表現に深く関わっている。中でも〈有機的ダイナミクス〉の構図を持つ柏木グループは構図のダイナミズムを補強する形で強調色が活用され、テクスチュアとの相乗効果を伴い、より鑑賞者の感性に訴える表現を実現している。
著者
菅原 布寿史
出版者
人間環境大学
雑誌
人間と環境 (ISSN:21858365)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.74-96, 2011-03-31

本稿は、『信貴山縁起絵巻』第一巻「飛倉の巻」の時間分析に映画編集の手法を転用することによって、個々のイメージではなくイメージの連関から生成する観念の問題に目を向け、この絵巻の特異な表現を明らかにしようという試みである。・一章では、時間分析の障害となっている第一巻「飛倉の巻」冒頭の欠落部分の復元をおこなう。・二章では、〈驚きと恐怖〉の観念を引き起こす「飛倉の巻」第一場面の時間分析を試みる。・三章では、第一場面から第二場面へと続く画面上の、視線の流れと心理的視野の変化を追う。・四章では、編集上の省略も含めた第五場面における鮮やかな〈奇跡〉の演出を時間分析する。・五章では、動画的イメージによって構成された、第六場面のダイナミックな時空表現のくスペクタクル〉を分析する。