著者
Mclellan Gerald
出版者
人間環境大学
雑誌
人間と環境 電子版 (ISSN:21858373)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.25-37, 2013-07-31

この論文では、援助交際について研究していきたい。「援助交際」とは、90年代後半から21世紀の初頭にかけて流行ったことばで、「報酬を伴ったデート」や「女子学生の売春」と英語で訳されてきた。援助交際とは一体何か、また、その背景にあるモラルや社会的問題を検討する。マスメディアや技術革新の役割を検証しながら、日本社会における女性の役割とポルノグラフィーを分析したい。
著者
内藤 可夫
出版者
河原学園 人間環境大学
雑誌
人間と環境 電子版 (ISSN:21858373)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.33-44, 2015-03-31 (Released:2018-04-23)

ニーチェは自我概念を批判し、これがそれ自身としての存在者の概念の誤った起源であると洞察した。それは自我概念の解体を意味している。和辻によって人の間の存在として定義された人間は、ニーチェのこの主張を前提にしたものと言える。自我概念はさらに他者の概念に基づけられる。それは発達や脳機能についての検証から言えることである。またこの他者の認知においては自己同一性や普遍性、統一性が認められる。それこそが西洋形而上学の存在概念の基礎的条件である。他者概念はしかし実在に対応するものでなく、有用性を持つ認識機能に過ぎない。ここにニーチェによるプラトニズムに対する徹底的な批判が完結するのということができるだろう。
著者
石上 文正
出版者
人間環境大学
雑誌
人間と環境 電子版 (ISSN:21858373)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-22, 2015-03-31

映画「男はつらいよ」シリーズの劇中において映画のタイトルが表示されるときの口上、「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯を使い、姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの寅と発します。」および寅さんが生きている社会・世界をN. フェアクラフの批判的ディスコース分析と社会分析を用いて考察する。批判的ディスコース分析から、寅さんの口上には多くの矛盾が認められ、彼が両義的人間であるという結論に至った。また、社会分析によっても彼が生きている世界は両義的世界であることが判明した。その結果、次の2 点が導かれる。(1)この映画では矛盾がさまざまな局面に存在することが、緻密にそして整合的に製作されている、(2)フェアクラフ理論は、社会とことばの分析において、今回のケースでは有効であった。寅さんおよび彼が生きている世界と同様に、現実の世界も矛盾や両義性に満ちていている。いっぽう、フェアクラフ理論の基本は、世界の整合性に基づいている。では、何故フェアクラフ理論が有効であったのだろうか。それは、整合性に基礎を置いている理論だからこそ、矛盾や両義性を検出しやすいのである
著者
岡 良和
雑誌
人間と環境 電子版 = Journal of Human Environmental Studies. Electronic Edition (ISSN:21858373)
巻号頁・発行日
no.13, pp.1-10, 2017-03-31

英語句動詞come across には「(偶然)出くわす」という意味がある。この意味においてはcomeが本来有している「移動」という意味特性が希薄になっている。本論文では、場所や時に関する直示語であるhere とnow が有する特性をもとに、come との意味的関係を明らかにすることで、come across の意味拡張プロセスをたどることを目的とする。
著者
石上文正
出版者
人間環境大学
雑誌
人間と環境 電子版 (ISSN:21858373)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-16, 2016-03-31

2015 年6 月23 日、安倍晋三首相は、「戦後70 年沖縄全戦没者追悼式」に参列した。この行事を扱った英国のThe Guardian の記事を、「節合」ではなく「結合」という概念を用いて分析した。その結果、この記事の主たるテーマは、安倍首相・政権への批判であり、その理由・原因の第一は、平和憲法の解釈の変更を伴う安保法案制定の動きであり、第2 は、基地の過重負担とそれと深く関わっている基地移設問題であることが判明した。安倍首相への批判に併せて、安倍首相のイメージを悪化させるためのさまざまな手段(たとえば、安倍首相への戦争イメージの付与)が用いられている。同記事の最後に「性奴隷もしくは慰安婦」に関するトピックが結合されていて、「節合」概念を考えるために、この結合が「必然的」なものか「非必然的」なものかについても議論した。
出版者
河原学園 人間環境大学
雑誌
人間と環境 電子版 (ISSN:21858373)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.14-38, 2014-07-31 (Released:2018-04-23)

フェルメール絵画では、背景に描かれた線・形体の軸・楔型による二次元的動勢が人物像に影響を及ぼし、視覚性を超えた観念や余情を生み出している。また、十二世紀東洋絵画の特定の作品においてもそれと同様の構造を見ることができる。それらの絵画に共通する特徴となるのは、近接した視点と奥行の浅い空間である。本稿ではフェルメールの画業の内で最も特徴的な時期の《眠る女》から《絵画芸術》までの作品を、主に徳川・五島本《源氏物語絵巻》・李迪《雪中帰牧図》と比較しつつ、その特異な表現を明らかにする。
著者
石上 文正
出版者
河原学園 人間環境大学
雑誌
人間と環境 電子版 (ISSN:21858373)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-22, 2015-03-31 (Released:2018-04-23)

映画「男はつらいよ」シリーズの劇中において映画のタイトルが表示されるときの口上、「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯を使い、姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの寅と発します。」および寅さんが生きている社会・世界をN. フェアクラフの批判的ディスコース分析と社会分析を用いて考察する。批判的ディスコース分析から、寅さんの口上には多くの矛盾が認められ、彼が両義的人間であるという結論に至った。また、社会分析によっても彼が生きている世界は両義的世界であることが判明した。その結果、次の2 点が導かれる。(1)この映画では矛盾がさまざまな局面に存在することが、緻密にそして整合的に製作されている、(2)フェアクラフ理論は、社会とことばの分析において、今回のケースでは有効であった。寅さんおよび彼が生きている世界と同様に、現実の世界も矛盾や両義性に満ちていている。いっぽう、フェアクラフ理論の基本は、世界の整合性に基づいている。では、何故フェアクラフ理論が有効であったのだろうか。それは、整合性に基礎を置いている理論だからこそ、矛盾や両義性を検出しやすいのである
著者
石上 文正
出版者
河原学園 人間環境大学
雑誌
人間と環境 電子版 (ISSN:21858373)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-19, 2011-02-28 (Released:2018-04-23)
被引用文献数
1

「環境」および "environment" の定義について考えることによって、人間、環境およびその関係にまつわる考え方や世界観について考察した。まず、基本的な辞書、百科事典で、「環境」および"environment"の定義について調べ、その定義を構成している一般的な 要素を見出した。[1]環境と生命体は二項関係として位置づけられている、[2]環境は空間的概念である、[3]環境と生命体の間には作用関係がある、[4]環境は自然的環境と社会的環境に分けられる、[5]環境は複合的で全体として作用する。次に、「人間環境宣言」および環境心理学(とくに、Interactional World ViewsとTransactionalWorld Views)において、環境概念に、上記の 要素が見出せるか否か、さらには、辞書や百科事典とは異なった考え方があるや否について検討を加えた。最後に、環境と生命体を二項関係として捉えない、いくつかの考え方を示した。
著者
内藤 可夫
出版者
人間環境大学
雑誌
人間と環境 電子版 (ISSN:21858373)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-11, 2012-11-30

哲学は伝統的に自我の概念を議論の出発点にしてきた。ニーチェはこれを批判し、霊魂への信仰がすべての存在概念の起源としての自我概念となったとしている。つまり、自我概念は形而上学の由来であり、存在概念の由来なのである。論理学や数学もまた不変の存在者の実在の仮定によって存在論的な意味を持ち、諸学における有効性を得ている。ニーチェが形而上学の由来と考えた自我は、さらに人間の倫理的な思考を由来としている。他者の概念がそれである。自我は他者から、つまり、倫理から由来したのである。そして、自我こそが人間存在の特殊性の根拠であるとしたならば、その根本は他者の把握・他者に対する態度の変容によって変わってくる。つまり倫理的態度(人格)が存在を変えるということになる。他者(人間以外を含む)に対する態度、倫理、人格の多様性は、「存在」の多様性の可能性、世界の開かれ方の多様性を帰結するのである。
著者
菅原 布寿史
出版者
人間環境大学
雑誌
人間と環境 電子版 (ISSN:21858373)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.46-70, 2012-02-29

第I部では徳川・五島本の構図を分析し、二分割した画面に主要なモチーフを配置することで物語内容を視覚的に表現した〈対置的スタティクス〉、様々な動勢が影響し合って動的な運動感で画面内を満たし、ドラマティックなインパクトが感性に訴えかける〈有機的ダイナミクス〉に分類した。第II部では徳川・五島本の色彩とテクスチュアが物語表現にどのような効果を与えているのかを分析する。色彩は、強調色の配置が物語表現に深く関わっている。中でも〈有機的ダイナミクス〉の構図を持つ柏木グループは構図のダイナミズムを補強する形で強調色が活用され、テクスチュアとの相乗効果を伴い、より鑑賞者の感性に訴える表現を実現している。