著者
藤井 つかさ 荻野 敏 有本 啓恵 入船 盛弘 岩田 伸子 大川 内一郎 菊守 寛 瀬尾 律 竹田 真理子 玉城 晶子 馬場 謙治 野瀬 道宏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.1288-1294, 2006-10-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
11

【目的】スギ花粉症患者のQOLについてSF-8を用いて調査し,その有用性を検討した.【方法】2005年のスギ花粉飛散ピーク時に,大阪府・兵庫県の診療所においてスギ花粉症で受診した患者に,SF-8によるQOLを含むアンケート調査を行い,シーズン中に全く治療を受けていない症例のうち有効回答の得られた204名を解析対象とした.【結果】SF-8の国民標準値と比較すると,スギ花粉症患者では精神面のQOLが有意に低値を示した.特に,女性では有意差が認められた.男女別に比較すると,SF-8のサマリースコアおよびほとんどのドメインにおいて,女性の方が身体面・精神面共にQOLが障害されていた.年齢別に分析すると,加齢に伴い,特に身体面でのQOLが低下した.また,くしゃみや鼻づまりなどの症状の重症化に伴い,精神面においてQOLの低下が認められた.【結語】本研究では,花粉飛散ピーク時のQOLについて,従来のSF-36を用いた研究と同様の結果が得られた.SF-8は,感度は良くないが,より短時間で行うことができ,大人数の症例検討や他疾患との比較において,今後有用な質問票になると示唆された.
著者
荻野 敏 入船 盛弘 有本 啓恵 岩田 伸子 荻野 仁 菊守 寛 瀬尾 律 竹田 真理子 玉城 晶子 馬場 謙治
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.247-251, 2006-07-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
5

73名のスギ花粉症患者を対象に、スギ、ヒノキ花粉の飛散量にかなりの変動が認められた2001年1月からの3年間、特異的IgE抗体価の経年的変化を検討した。スギ、ヒノキの大量飛散によりスギ、ヒノキ特異的IgE抗体価は翌年の1月には有意に上昇し、飛散少量年の翌年には有意に低下する経年的な変化が見られた。それに対し、HD、カモガヤでは同様の変動は見られなかった。この変動は年齢にかかわらず認められた。以上のように、特異的IgE抗体価はアレルゲンの曝露量に極めて大きな影響を受け、スギ、ヒノキ花粉の大量飛散後には、特異的IgE産生が亢進し、翌年まで高抗体価を持続することから、少量飛散年と予測されても被曝量を減らすことを考慮した生活指導が必要と思われた。
著者
荻野 敏 菊守 寛 後藤 啓恵 入船 盛弘
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.222-231, 1996-04-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
6
被引用文献数
1

男性23名, 女性33名のイネ科花粉症を対象に, アゼラスチンの効果を初期投与, 治療投与の2群で比較検討した。著明改善は初期投与群28.6%, 治療投与群23.8%と初期投与群で良い効果が見られた。逆に改善以上の改善率はそれぞれ57.1%, 71.4%と治療投与群でより良い効果が認められた。また, 初期投与群では平均約4週間早く投与を開始したことから8週目, 治療投与群では4週目とほぼ同じ時期の症状を比較すると, 初期投与群では症状はより軽症に抑えられている成績が得られた。治療投与群の3例に軽度の眠気の副作用が認められたが, 薬剤の継続投与に問題はなかった。アゼラスチンはイネ科花粉症に対しても初期投与, 治療投与いずれにおいても優れた効果が見られ, 特に花粉飛散初期からの投与は有効性が高く使用する価値のある薬剤であると思われた。