著者
菊谷 和宏
出版者
いなほ書房
雑誌
社会学史研究 (ISSN:02886405)
巻号頁・発行日
no.32, pp.15-28, 2010-06
著者
菊谷 和宏
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.172-187, 1998

本稿は, コントからデュルケームへの社会学的実証主義の系譜の背後に隠れ, これまで我が国では顧みられることの少なかった, トクヴィルからデュルケームへの社会思想の深化の系譜をたどりながら, 我々が今日当たり前のものとして用いている社会学的人間観が, どのように形成されてきたか, その一つの過程を描き出すものである。<BR>その際, 一八四八年二月革命とドレフュス事件という近代フランス史上の二つの, 時代を画する社会的事件を取り扱い, これらの歴史的事象が社会科学的認識の形成に与えたインパクトを明らかにしつつ議論を進める。<BR>その結論として, 我々の人間観 (の少なくとも一部) が, 歴史的に形成された, 超越性 (一般・普遍性) と世俗性 (個別・具体性) という相対する二つの認識視角を, その矛盾を内包しつつかろうじて融合させることによって成り立っていること, またそのような融合にはこれを支える一つの「権威」が不可欠であることが明らかとなり, またこのような人間観の分析は「コントからデュルケームへ」ではなく「トクヴィルからデュルケームへ」の社会認識の深化の過程を追うことによって有効に行われうるという可能性が提示される。<BR>またさらに, このような人間観の形成過程が, 同時に, 今日的な意味における社会観の形成過程でもあることも明らかとなろう。