著者
菱田 一仁
出版者
The Japan Association of Sandplay Therapy
雑誌
箱庭療法学研究 (ISSN:09163662)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.51-61, 2012

人形はわれわれにとって身近なものであるが, 心理臨床においてもそれは例外ではない。遊戯療法や箱庭療法において人形は使用されるが, それらについて考察するうえで, そうした場で使われる人形のあり方について考察することが有用であると考えられる。人形という存在について考えるとき, 特徴的だと考えられるのが, 人形が人によって弄ばれるという点である。他と異なり人形は「私」という個人によって弄ばれ, それによって人形は「私」であって「私」でないという二重性を持った中間的な存在となると考えられる。そして, そうした中間的な存在として, かつて人形が人の思いや苦しみを託すヒトガタとして用いられたように, 現代の心理臨床の場面においても, そうした中間的な存在として「私」の想いや生きる苦しみを代わりに受ける存在として, 人形は存在していると考えられる。
著者
菱田 一仁
出版者
日本箱庭療法学会
雑誌
箱庭療法学研究 (ISSN:09163662)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.27-38, 2019 (Released:2019-06-14)
参考文献数
39

河合(1975)の言うように,箱庭療法は古来行われてきた箱庭遊びとの関連を持っている。そして,箱庭が生まれてきた経緯について歴史的に見ていくと,それが大嘗祭における標の山のような造り物の系譜の中に生まれてきたものであることが分かる。造り物はのちの世には次第に洲浜や灯籠,盆景といった様々な形で作られるようになった。造り物は,見立てという技法を持つことによって,その置かれる場所を超越的な経験の起こる場所へと変える力を持っているといえる。見立てとはある種の隠喩であり,それによって造り物は,見たままの意味とそれの暗示する内的な真実という二つのものを同時に表すことができるようになると考えられる。つまり,造り物という観点から改めて見るとき,同様に見立てという技法によって作られたり見られたりする箱庭も同じような特徴を持っており,だからこそそこに投影された隠れたクライエントの本質を明らかにすることができるようになると考えられる。
著者
菱田 一仁
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.387-389, 2013-03-28

Dolls are very close to our existence and there are many dolls even in counseling rooms. HISHIDA (2012) thinks the meaning of dolls in Sand Play Therapy as a scapegoat for the clients which shoulders clients' sufferings vicariously. They are used to sweep the sufferings away. But, in historical viewing, there was another way of using dolls: they were used to invite gods in them and treated as spirits themselves. They were thought to be a kind of image which is the home of god. In regard to Sand Play Therapy, Kawai (1991) emphasizes the significance of the spirit of land which dwells in the sand box. The spirit is related to the Soul, the infinity on which Hillman, J. (1982) talks about. And when we think about the dolls as that to invite gods, they have also the meaning to have relationship with the infinity, as the spirit of land, in Sand Play Therapy. Then, Dolls have both meaning to sweep sufferings away and to have connection with the infinity. Because dolls have these two aspects, clients are ensured and opened to creativity at the same time in the Sand Play Therapy. (193 words)