- 著者
-
菱田 一仁
- 出版者
- 日本箱庭療法学会
- 雑誌
- 箱庭療法学研究 (ISSN:09163662)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.3, pp.27-38, 2019 (Released:2019-06-14)
- 参考文献数
- 39
河合(1975)の言うように,箱庭療法は古来行われてきた箱庭遊びとの関連を持っている。そして,箱庭が生まれてきた経緯について歴史的に見ていくと,それが大嘗祭における標の山のような造り物の系譜の中に生まれてきたものであることが分かる。造り物はのちの世には次第に洲浜や灯籠,盆景といった様々な形で作られるようになった。造り物は,見立てという技法を持つことによって,その置かれる場所を超越的な経験の起こる場所へと変える力を持っているといえる。見立てとはある種の隠喩であり,それによって造り物は,見たままの意味とそれの暗示する内的な真実という二つのものを同時に表すことができるようになると考えられる。つまり,造り物という観点から改めて見るとき,同様に見立てという技法によって作られたり見られたりする箱庭も同じような特徴を持っており,だからこそそこに投影された隠れたクライエントの本質を明らかにすることができるようになると考えられる。