- 著者
-
萩行 正嗣
河原 大輔
黒橋 禎夫
- 出版者
- 一般社団法人 言語処理学会
- 雑誌
- 自然言語処理 (ISSN:13407619)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, no.3, pp.563-600, 2014-06-16 (Released:2014-09-16)
- 参考文献数
- 22
- 被引用文献数
-
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日本語では用言の項が省略されるゼロ照応と呼ばれる現象が頻出する.ゼロ照応は照応先が文章中に明示的に出現する文章内ゼロ照応と,明示的に出現しない外界ゼロ照応に分類でき,従来のゼロ照応解析は主に前者を対象としてきた.近年,Web が社会基盤となり,Web上でのテキストによる情報伝達がますます重要性をましている.そこでは,情報の送り手・受け手である著者・読者が重要な役割をはたすため,Web テキストの言語処理においても著者・読者を正確にとらえることが必要となる.しかし,文脈中で明確な表現(人称代名詞など)で言及されていない著者・読者は,従来の文章内ゼロ照応中心のゼロ照応解析では多くの場合対象外であった.このような背景から,本論文では,外界ゼロ照応および文章の著者・読者を扱うゼロ照応解析モデルを提案する.提案手法では外界ゼロ照応を扱うために,ゼロ代名詞の照応先の候補に外界ゼロ照応に対応する仮想的な談話要素を加える.また,語彙統語パターンを利用することで,文章中で著者や読者に言及している表現を自動的に識別する.実験により,我々の提案手法が外界ゼロ照応解析だけでなく,文章内ゼロ照応解析に対しても有効であることを示す.