著者
萬田 芙美
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.1045-1052, 1991-01-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

オクラ栽培に起因する皮膚障害について, 鹿児島県南部のオクラ栽培地帯における実態を現地調査した。オクラ栽培作業者89名のうち48名 (53.9%) がオクラによる皮膚障害を経験している。障害部位は, 腕 (43.8%), 手背 (35.4%), 首 (33.3%), 手指 (29.2%) など皮膚の露出部位に生じやすい。症状は, 収穫作業時は主に掻痒 (85.4%), 発赤 (45.8%) であり, 袋詰作業時は掻痒 (66.7%) のほか, 手指の指紋消失 (50.0%) や亀裂 (50.0%) がみられる0これらは, 適切な予防措置を講じない場合にはほぼ全員に発症し, またその発症は作業開始後まもなく出現する。オクラ爽果成分の皮膚貼付試験では, オクラ群 (12.4%) が非オクラ群 (3.4%) に比べ陽性率が若干高い傾向がみられた。これらの成績から, オクラ栽培に伴う皮膚障害は主にオクラの一次刺激作用によるものと考えられるが, オクラ成分によるアレルギー性接触皮膚炎の可能性も示唆された。
著者
上田 厚 青山 公治 藤田 委由 上田 忠子 萬田 芙美 松下 敏夫 野村 茂
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.55-66, 1986-05-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

菊栽培従事者の男子47%, 女子62%に, 作業に関連した鼻, 呼吸器症状および皮膚症状がみられた。前者は選花作業時'後者は農薬散布時に自覚されることが多いようであった。菊および農薬に対するパッチテスト, プリげクテスト'血清免疫グロブリン値測定, 鼻汁検査などにより, 前者の症状は即時型, 後者は遅延型アレルギーの関与が示唆された。また, これらのアレルギー学的検査所見の有無と, 菊および農薬の暴露量には若干の関連が認められた。アレルギー所見は, 菊の品種別では, 大芳花に最も高率で'ついでステッフマン, 金盃, 寒山陽などであったが'主として大輸株に即時型'小菊株に遅延型の症状が集積している傾向を認めた。しかしながら, 各品種と検査所見との関連をφ係数で検討すると'アレルギー学的検査所見との関連のとくに著しい品種は検出されなかった。また'皮膚症状については, パッチテスト成績などよりみて, 菊よりもむしろ農薬の関与が強いと思われる成績が得られた。このように, 菊栽培従事者の多くは, 作業に伴い菊や農薬の慢性的な暴露を受け, それに感作された状態にあることが確かめられた。さらに, それらによるアレルギー症状は, その他の作業環境における種々のallergenに様々に修飾されて発現するものであることが示唆された。