著者
平山 傑 丹野 克俊 蕨 玲子 上村 修二
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.131-135, 2008-02-15 (Released:2009-06-09)
参考文献数
9

症例は29歳の男性。 8 年前まで下垂体胚細胞腫の放射線治療を施行されており,汎下垂体機能低下症に対して 1 日にhydrocortisone 20mgを投与されていた。大量の水様性下痢後に全身脱力と低体温を呈したため当院に救急搬送された。低体温に対し電気毛布による体表復温と,温水を使用した胃洗浄による内部復温を開始した。復温に伴い血圧低下が出現したためrewarming shockを疑い輸液負荷を行ったものの反応せず,dopamineを開始したが低血圧が遷延した。既往歴とカテコラミンに不応性のショックから,急性副腎不全を疑い,搬入より11時間後にhydrocortisone 100mgを静脈内投与した。その後から徐々に血圧が上昇し,輸液負荷やdopamineを漸減することが可能となった。hydrocortisone投与前の血中コルチゾール濃度は1.4μg/dlと低値を示していた。第 4 病日にICUを退室し,第11病日に独歩退院となった。急性副腎不全はよく知られた疾患であるが,実際に救急外来で遭遇することはまれである。症状も様々で検査所見も非特異的なものが多く,診断に苦慮する。時にカテコラミンに不応性のショックを呈するため,早期の診断と治療が予後を左右する。カテコラミン不応性のショックをみた場合,既往歴や経過から積極的に急性副腎不全を疑い,ステロイドを投与すべきであると考えられた。