著者
原 正浩 上村 修二 大西 浩文
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.827-836, 2022-10-31 (Released:2022-10-31)
参考文献数
13

目的:ウツタイン統計データから,院外心肺機能停止症例の社会復帰率の都道府県間格差に影響を与える地域要因を明らかにする。方法:2006年4月1日〜2015年12月31日の全国ウツタインデータから分析を行った。結果:都道府県における社会復帰率が中央値の6.8%以上と中央値未満の2群で社会復帰率高値群・低値群を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を行い,バイスタンダーによる心肺蘇生法実施率(オッズ比:1.194)および覚知から傷病者接触までの平均時間(オッズ比:0.015)が選択され,ともに有意な結果となった。決定木分析においても,もっとも重要な要因は覚知から傷病者接触までの平均時間(カットオフ値:8.95分)であり,次に重要な要因はバイスタンダーによる心肺蘇生法実施率(カットオフ値:51.05%)となった。結論:覚知から傷病者接触までの時間の短縮とBS-CPR実施率の向上に地域で取り組むことは社会復帰率向上につながる可能性が示唆された。
著者
平山 傑 丹野 克俊 蕨 玲子 上村 修二
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.131-135, 2008-02-15 (Released:2009-06-09)
参考文献数
9

症例は29歳の男性。 8 年前まで下垂体胚細胞腫の放射線治療を施行されており,汎下垂体機能低下症に対して 1 日にhydrocortisone 20mgを投与されていた。大量の水様性下痢後に全身脱力と低体温を呈したため当院に救急搬送された。低体温に対し電気毛布による体表復温と,温水を使用した胃洗浄による内部復温を開始した。復温に伴い血圧低下が出現したためrewarming shockを疑い輸液負荷を行ったものの反応せず,dopamineを開始したが低血圧が遷延した。既往歴とカテコラミンに不応性のショックから,急性副腎不全を疑い,搬入より11時間後にhydrocortisone 100mgを静脈内投与した。その後から徐々に血圧が上昇し,輸液負荷やdopamineを漸減することが可能となった。hydrocortisone投与前の血中コルチゾール濃度は1.4μg/dlと低値を示していた。第 4 病日にICUを退室し,第11病日に独歩退院となった。急性副腎不全はよく知られた疾患であるが,実際に救急外来で遭遇することはまれである。症状も様々で検査所見も非特異的なものが多く,診断に苦慮する。時にカテコラミンに不応性のショックを呈するため,早期の診断と治療が予後を左右する。カテコラミン不応性のショックをみた場合,既往歴や経過から積極的に急性副腎不全を疑い,ステロイドを投与すべきであると考えられた。
著者
上村 修二 丹野 克俊 平山 傑
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.10, pp.713-717, 2007-10-15 (Released:2009-02-27)
参考文献数
13

症例は63歳の女性。自殺目的で焼酎5合とハイポネックス®推定150mlを服用し, 18時間後に救急外来を受診した。来院時, 高カリウム血症とメトヘモグロビン血症 (動脈血メトヘモグロビン25.6%) を呈していたが, メトヘモグロビン値は徐々に改善し, 来院12時間後に正常値となり, 第3病日退院となった。ハイポネックス®中毒による死亡例の報告はあるが, メトヘモグロビン血症の発症の報告はない。硝酸塩が酸化物質である亜硝酸塩に還元され, 血液内で亜硝酸塩によりヘモグロビンがメトヘモグロビンに酸化された結果と推測された。液体肥料中毒の重症例の報告は稀であるが, メトヘモグロビン血症を起こす可能性が考えられるので注意が必要と考えられた。
著者
俵 敏弘 武山 佳洋 葛西 毅彦 岡本 博之 上村 修二 井上 弘行 諸原 基貴 江濱 由松
出版者
市立函館病院
雑誌
函館医学誌 = Hakodate medical journal = Hakodate medical journal (ISSN:09100725)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.37-40, 2018-10-31

グリホサート・界面活性剤含有除草剤(glyphosatesurfactant herbicide;GlySH)は雑草枯死目的で用いられ,入手も容易であり,本邦では自殺目的の服用が多数報告されている1)。主な中毒作用としてはグリホサートによる腎機能障害や代謝性アシドーシス,界面活性剤による粘膜刺激・消化管腐食作用,肺障害,心筋抑制等が知られている2)。 今回我々は喉頭浮腫をきたした重症グリホサート中毒を4例経験したので,その病態および治療等について,文献的考察を加えて報告する。