著者
井田 佳祐 吉原 将大 薛 俊毅 楠瀬 悠 佐藤 ひとみ 日野 泰志
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.117-126, 2014

漢字語の命名成績は,漢字レベルの形態—音韻対応の一貫性の程度に依存するのか,それとも漢字の読みの種類(音読 vs. 訓読)に依存するのかを検討するため,実験1では,形態—音韻対応の一貫性を統制した漢字二文字による音読熟語と訓読熟語の命名成績の比較を試みた.実験2では,訓読による漢字一字語の命名成績に,その漢字の音読比率の効果が観察されるかどうかを検討した.実験1では,音読熟語と訓読熟語間に命名成績の差は検出されなかった.実験2では,音読比率が低い漢字ほど,訓読による命名反応が速かった.これらの結果は,漢字語の命名成績は,漢字レベルの形態—音韻対応の一貫性に依存するが,漢字の音訓には依存しないことを示すものであった.
著者
楠瀬 悠 吉原 将大 井田 佳祐 薛 俊毅 伊集院 睦雄 日野 泰志
出版者
The Japanese Society for Cognitive Psychology
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.105-115, 2014

語彙判断課題を使ってカタカナ三文字語と四文字語間および漢字二字熟語と三字熟語間の課題成績の比較を試みた.カタカナ表記語には語長効果は観察されなかったが,漢字表記語には有意な語長効果が観察された.漢字三字熟語に対する反応時間は漢字二字熟語に対する反応時間よりも有意に長かった.この効果は,漢字表記語群間で形態隣接語数を統制しても観察された.漢字表記語は複合語であったのに対して,カタカナ表記語は単語であったことから,漢字表記語のみに観察された語長効果は,形態素数の差異を反映する効果であるものと思われる.漢字表記語の読みに,形態素への分解と統合を仮定すると語全体レベルの表象へのアクセスには,分解された複数の形態素に対する再統合が必要である.漢字三字熟語のほうが,二字熟語よりも複雑な形態素構造を持つため,この統合処理において語長効果が生じたものと思われる.本研究の結果は,語の読みの処理の性質が,その語が持つ形態素構造に強く依存することを示唆する.