著者
藍 浩之 西野 浩史
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.110-121, 2007 (Released:2007-12-10)
参考文献数
58
被引用文献数
2 2

フォン・フリッシュがミツバチのダンス言語を発見してはや60年,ハチはダンスを“見る”のではなくダンスのときに生じる翅音を“聞く”ことによって蜜源までの方向と距離を計算していることが明らかになりつつある。この聴覚情報処理にあずかる感覚器官が触角基部にあるジョンストン器官である。われわれはダンス言語情報処理システム解明のための第一歩としてジョンストン器官の一次感覚中枢の同定に成功した。ジョンストン器官の感覚線維の投射パターンは従来考えられていた以上に精緻で,多数の並列情報処理経路を形成していることが示唆される。本総説では比較形態学の観点からジョンストン器官の研究のトレンドを広く紹介したい。
著者
藍 浩之
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.73-84, 2011-06-05 (Released:2011-07-22)
参考文献数
38

昆虫は自らの運動で生じた空気振動をうまく利用し行動を制御し,またときには積極的に空気振動を作り出すことによって仲間との通信を行う.外界の空気粒子の振動は,振動源の近接場でのみ生じるため,その振動を受容する感覚器はその振動源の近接場でのみ機能する.本稿では,著者が研究をしてきた2つの事例を元に,昆虫がいかに巧みに振動を受容し,行動に結びつけているかをご紹介する.一つ目はカイコガの翅辺縁部に存在する剛毛感覚子の分布,形態と振動応答特性について,二つ目はミツバチの尻振りダンスで生じる振動をとらえるジョンストン器官の機能と脳内情報処理についての研究である.