著者
藤丸 麻紀 Maki FUJIMARU
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.51-64, 2015-03-31

児童館の対象や機能はどんどん拡充してきたが、最近では、建物の老朽化と地方財政の悪化で閉館したり指定管理者制度を導入するところが増えている。さらに新設の子ども子育て支援新制度では、児童館の機能を子育て支援の拠点と放課後児童クラブのみを助成対象とし、放課後児童クラブについては文部科学省の全児童対策事業である放課後子供教室との一体化の方向をめざしている。 しかし、児童館の機能・役割は子育て支援と放課後児童クラブのみではない。一般来館で自由に遊びに行く乳幼児から、小学生、中高生までが放課後や学業休業期の居場所・遊び場として、活用している。そこには学校では得られない縦のつながりや、地域とのつながりやコミュニティの形成といった横のつながりがある。そしてイベントの企画・運営に携わることで、ボランティアを育成し、地域と一体となった児童の健全育成の拠点ともなっている。 つまり、児童館は正の外部性をもつといえる。そのため、子ども子育て支援新制度で児童館に十分な予算措置がない中で児童館を存続させるためには、指定管理者制度の導入によるコスト削減で供給量を確保することも必要な措置と考えられる。指定管理者制度のデメリットや懸念される要因については、運営委員会などで地域が一体となって協力していくことでカバーできるだろう。
著者
藤丸 麻紀 MAKI FUJIMARU
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.129-141, 2011-03

本稿では、子ども手当のGDPに対するマクロ経済効果として乗数分析を行い、出生率に対するミクロ経済効果として家計内生産理論モデルによる子どもに対する需要関数の分析を行った。またデータ分析を行い、理論による分析を補足した。 GDPに対するマクロ経済効果としては、消費拡大効果はあるものの、子ども手当の財源確保のために政府消費削減、公共投資削減、増税などが伴えば、GDPにはマイナスの効果をもたらすことが分かった。 また、出生率に対するミクロ経済効果としては、子どもへの需要を増加させる効果はあるが、子ども手当が生涯所得に与える影響が小さければその効果は小さいと考えられることと、子どもへの需要が増加しても出生率は変わらず子ども一人当たりの支出を増加させる可能性もあることが分かった。 データによる分析では、期待される生涯賃金が減少していることや女性非正社員の賃金の低さが出生率の低下につながっていると考えられることが分かった。したがって、子ども手当の支給よりも、保育サービスの提供や保育料負担軽減などを行った方が所得を増加させ出生率増加につながるのではないかと考えられる。
著者
藤丸 麻紀 フジマル マキ Maki Fujimaru
雑誌
和洋女子大学紀要. 人文系編
巻号頁・発行日
vol.45, pp.85-99, 2005-03-31

現在歯止めがかからない少子化の進行に対し、従来以上に包括的な政策として平成14年に発表された「少子化対策プラスワン」の内容を検討すると、大きく分けて、仕事と子育てとの両立支援(政策Aとする)、子育て費用軽減サービス(政策B)、出生力増加の基盤づくり(政策C)の3つの分野から成っている。また、少子化の要因を示す統計からは、仕事と子育てとの両立が難しい中で育児費用負担が大きいという「経済的要因」と、晩婚化・晩産化のために出生力が低下しているという「高齢要因」が大きなネックとなっていることが分かる。そこで本稿では、今後の少子化対策としては、政策Aの公的保育サービス(保育料金の公的負担)と、政策Cの供給サイドの少子化対策が重要であると考え、理論モデルを用いて政策の効果の分析を行なった。その結果、政策Aについては「保育サービスの拡充と費用補助」を行い、育児と仕事の両立という選択肢が妨げられないような支援を行なうこと、および政策Cについては「出生力増加のための不妊治療の負担補助」などの対策が必要であると言える。今後は、本稿のモデルや仮説に合わせた実証分析を充実させ、各政策の効果の測定を行なう予定である。
著者
藤丸 麻紀
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.51-63, 2017-03-31

保育園の待機児童の増加に伴い、小学校入学後の学童保育の待機児童も増加しており、「小1の壁」という問題が生じている。そこで女性が活躍できる社会をめざすために、2014年に「放課後子ども総合プラン」が策定された。このプランに基づき、各自治体で放課後子ども教室の拡充が進められ、学童保育も放課後子ども教室と一体化させる自治体が多くなってきた。これは待機児童の解消には効果的であるが、学童保育と放課後子ども教室との本来の意義・機能を損なう懸念がある。本稿では、事例研究として東京23区の例を具体的に調べ、あるべき一体化の方向性を探った。 また、少子化にも関わらず保育園及び学童保育の待機児童が増えている現状を分析するために要因分析を行った。晩婚化・核家族化などにより学童保育の需要増は今後も続くと考えられる。 理論分析としては、家計内生産モデルを用いて、妻の就業時間と家計の収入の選択が、学童保育の有無などでどのように変わるかを分析した。
著者
藤丸 麻紀
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.41-54, 2016-03

民間活力導入の流れの中で指定管理者制度が2003年に導入されて10年以上が経過し、指定管理者制度導入施設は増加した。指定管理者制度を経済学的に考えると、不完備契約とプリンシパル=エージェント理論を当てはめることができる。とくに児童館・保育園への指定管理者制度導入を考えると、指定期間を長くすることが望ましいが、エージェンシー・スラックを抑えるためにはモニターコストをかける必要があるといえる。実証分析で東京23区の指定管理者導入施設について分析を行ったところ、児童館・保育園を含む社会福祉施設については指定期間が長くなっていることが分かった。次に児童館と保育園を分けて分析したところ、保育園については指定期間が長くなっているが、児童館についてはむしろ短くなっていることが分かった。しかし児童館・保育園に指定管理者制度を導入し、その中でもとくに株式会社を指定管理者としている例はまだ数が少なく十分な分析が行えない。そこで東京都中央区の例を参考に事例研究を行った。その結果、児童館に対する指定管理者制度導入によって運営費用を抑えながらサービスの質的向上を図るために、指定期間を10年間と長くしている一方で、公設公営の館を基幹館として指導・監督を行う、運営委員会を開催する、引継ぎ期間を長くするなど、モニターコストや引継ぎコストを十分にかけていると推測できることが分かった。
著者
藤丸 麻紀
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 人文系編 (ISSN:09160027)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.85-99, 2005-03-31

現在歯止めがかからない少子化の進行に対し、従来以上に包括的な政策として平成14年に発表された「少子化対策プラスワン」の内容を検討すると、大きく分けて、仕事と子育てとの両立支援(政策Aとする)、子育て費用軽減サービス(政策B)、出生力増加の基盤づくり(政策C)の3つの分野から成っている。また、少子化の要因を示す統計からは、仕事と子育てとの両立が難しい中で育児費用負担が大きいという「経済的要因」と、晩婚化・晩産化のために出生力が低下しているという「高齢要因」が大きなネックとなっていることが分かる。そこで本稿では、今後の少子化対策としては、政策Aの公的保育サービス(保育料金の公的負担)と、政策Cの供給サイドの少子化対策が重要であると考え、理論モデルを用いて政策の効果の分析を行なった。その結果、政策Aについては「保育サービスの拡充と費用補助」を行い、育児と仕事の両立という選択肢が妨げられないような支援を行なうこと、および政策Cについては「出生力増加のための不妊治療の負担補助」などの対策が必要であると言える。今後は、本稿のモデルや仮説に合わせた実証分析を充実させ、各政策の効果の測定を行なう予定である。