- 著者
-
藤丸 麻紀
- 出版者
- 和洋女子大学
- 雑誌
- 和洋女子大学紀要 (ISSN:18846351)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, pp.41-54, 2016-03
民間活力導入の流れの中で指定管理者制度が2003年に導入されて10年以上が経過し、指定管理者制度導入施設は増加した。指定管理者制度を経済学的に考えると、不完備契約とプリンシパル=エージェント理論を当てはめることができる。とくに児童館・保育園への指定管理者制度導入を考えると、指定期間を長くすることが望ましいが、エージェンシー・スラックを抑えるためにはモニターコストをかける必要があるといえる。実証分析で東京23区の指定管理者導入施設について分析を行ったところ、児童館・保育園を含む社会福祉施設については指定期間が長くなっていることが分かった。次に児童館と保育園を分けて分析したところ、保育園については指定期間が長くなっているが、児童館についてはむしろ短くなっていることが分かった。しかし児童館・保育園に指定管理者制度を導入し、その中でもとくに株式会社を指定管理者としている例はまだ数が少なく十分な分析が行えない。そこで東京都中央区の例を参考に事例研究を行った。その結果、児童館に対する指定管理者制度導入によって運営費用を抑えながらサービスの質的向上を図るために、指定期間を10年間と長くしている一方で、公設公営の館を基幹館として指導・監督を行う、運営委員会を開催する、引継ぎ期間を長くするなど、モニターコストや引継ぎコストを十分にかけていると推測できることが分かった。