著者
黒田 誠
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.1-14, 2017-03-31

真下耕一監督のアニメ作品『Madlax』を対象に、仮構作品が鑑賞手順として要求する仮構世界受容の過程において前提とされる暗黙の了承事項が意図的に脱臼させられ、全方位的に仮構的意味構成軸を散乱させる表現が達成されている実態を検証する。これは独特の創作戦略を採用した演出における詳細記述の内実をユング心理学におけるプレローマ世界の発想と照らし合わせることにより、仮構的リアリティの本質に対する形而上的把握を図ることを目的とするものである。本稿はこの企図に基づき全26話中の第3話から第5話までの映像表現の概念化を図り、原型的多義性を反映したハイパーナチュラルな主題提示手法についての考察を進めたものである。
著者
黒田 誠
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.1-14, 2017-03-31

真下耕一監督のアニメ作品『Madlax』を対象に、仮構作品が鑑賞手順として要求する仮構世界受容の過程において前提とされる暗黙の了承事項が意図的に脱臼させられ、全方位的に仮構的意味構成軸を散乱させる表現が達成されている実態を検証する。これは独特の創作戦略を採用した演出における詳細記述の内実をユング心理学におけるプレローマ世界の発想と照らし合わせることにより、仮構的リアリティの本質に対する形而上的把握を図ることを目的とするものである。本稿はこの企図に基づき全26話中の第3話から第5話までの映像表現の概念化を図り、原型的多義性を反映したハイパーナチュラルな主題提示手法についての考察を進めたものである。
著者
島田 由紀子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.87-96, 2017-03-31

幼稚園の造形活動や小学校の図画工作は、美術を専門に学んだ保育者や教師が担当するとは限らない。したがって、造形活動や図画工作の指導や援助に戸惑う者も少なくない。その戸惑いの影響は、幼児や児童の表現にも表れることが予想され、幼児や児童自身の苦手意識にもつながることが考えられる。造形活動や図画工作を苦手に感じている保育者や教師が多いことから、活動や授業にすぐに結びつく実践的な書籍がこれまでも多く出版され、また講習会や研修会も数多く行われている。特に、描画活動は幼稚園でも小学校でも行われていることから、保育者や教師のさらなる描画指導に対する苦手意識と困難さは先行研究からも読み取ることができる。描画指導に対する苦手意識や困難さを感じている保育者や教師にとって、具体的なメソッドを教授する講習会の影響は大きく、絵画コンクールに出品される作品からもその影響がみられる。しかし、メソッドによる描画指導法については、これまで、造形教育や美術科教育の研究対象としてはほとんど取り上げられてこなかった。その理由に、メソッドに沿った描画では幼児や児童の思いや個性が表現されず、画一的な表現に陥ることが挙げられている。一方、メソッドによる描画指導の講習会は毎年行われていることから、支持している、あるいは頼りにしている保育者や教師が多いことが推測される。描画指導法のメソッドが確立、普及していった背景からは、絵が描けない幼児や児童の存在と、自身の描画に対する苦手意識と指導や援助に困惑している保育者や教師の姿が見えてくる。そして、メソッドを習得した後、活動や授業の中で実践し、幼児や児童が予想していたように描けることに達成感や手応えを感じ、さらにメソッドを取り入れた指導法を推し進めているという実態が考えられる。 幼稚園教育要領や小学校学習指導要領にメソッドによる描画指導法を照らし合わせて考えると、必ずしも沿ったものではないことがわかる。幼稚園教育要領や小学校学習指導要領は「上手に絵を描くこと」をねらいや目標としていないからである。メソッドでは、学力の三要素にもある知識や技能の習得は可能であっても、思考力・判断力・表現力、主体的に学習に取り組む態度には結びつきにくい側面があることも推測される。また、学校教育ならではの集団での遊びや学びがメソッドでは想定されておらず、友達や保育者、教師とのかかわりは重視されていない。今後、幼児や児童自身がメソッドによる描画指導法についてどのように感じ考えているのか把握する必要がある。
著者
藤丸 麻紀
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.51-63, 2017-03-31

保育園の待機児童の増加に伴い、小学校入学後の学童保育の待機児童も増加しており、「小1の壁」という問題が生じている。そこで女性が活躍できる社会をめざすために、2014年に「放課後子ども総合プラン」が策定された。このプランに基づき、各自治体で放課後子ども教室の拡充が進められ、学童保育も放課後子ども教室と一体化させる自治体が多くなってきた。これは待機児童の解消には効果的であるが、学童保育と放課後子ども教室との本来の意義・機能を損なう懸念がある。本稿では、事例研究として東京23区の例を具体的に調べ、あるべき一体化の方向性を探った。 また、少子化にも関わらず保育園及び学童保育の待機児童が増えている現状を分析するために要因分析を行った。晩婚化・核家族化などにより学童保育の需要増は今後も続くと考えられる。 理論分析としては、家計内生産モデルを用いて、妻の就業時間と家計の収入の選択が、学童保育の有無などでどのように変わるかを分析した。
著者
木村 尚志
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.186-176, 2017-03-31

歌語「夜の鶴」は『和漢朗詠集』の「第三第四絃冷々 夜鶴憶子籠中鳴」(管絃・五絃弾・白居易)に基づく。高内侍は長子伊周が流罪となった時に、病に倒れ「夜の鶴都のうちに籠められて子を恋ひつつもなきあかすかな」(栄花物語・浦々の別れ)と詠んだ。百七十年後、源平の合戦に敗れ捕虜となった平家の武将平宗盛とその子清宗は、鎌倉へ向かった後、京都へ送還され、近江国篠原宿で斬首された。宗盛が清宗のことを思って泣いていたと聞いた西行は、「夜の鶴都のうちをいでてあれな子の思ひには惑はざらまし」(西行法師家集)と詠んだ。二首ともに「都のうち」に五絃弾の詩から取った「籠の中」という言葉を掛けて「夜の鶴」の縁語として詠み込み、そして栄枯盛衰の時代状況の中で生まれたものである。本稿では鶴という歌語全体の性質にまで視野を広げつつ、このような「夜の鶴」にまつわる逸話が後の時代の歌語「鶴」の展開にどのように関与するのかを家の意識等にも着目しつつ考察する。
著者
河内山 有佐
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
no.57, pp.149-156, 2017-03-31

本学では、国際語としての英語のコミュニケーション能力育成を目指し、教育振興支援助成の補助を得て、2014年度と2015年度に渡り、e-learning教材によるTOEIC及びTOEFL関連教材の充実化を図った。新たなe-learning教材の使用を含めた英語の授業効果を測定する為、外部テストを利用した団体受験を実施して、英語学習の成果としての習熟度の伸びを測定した。本研究では、2014年度及び2015年度に実施した英語の事前・事後テストの結果を分析し、英語授業における成果を考察した。
著者
星野 文子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.15-25, 2017-03-31

This paper aims to introduce articles written by Yone Noguchi in the Japan Weekly Mail between January 1913 and June 1914. These articles, which were recently identified by researchers, will be used to analyze his sense of himself as a poet, or his poet-self. Yone Noguchi was the first Japanese poet who published English poetry books in United States of America at the end of the19th century, and in England at the beginning of the 20th century. After spending nearly 11 years abroad, he came back to Japan in 1904 as a well-known poet, and continued writing actively for various magazines and newspapers, as well as publishing books in both English and Japanese languages. At the time, he was one of the only Japanese capable of doing so. It recently came to light that the Japan Weekly Mail carried many of Noguchi’s articles before, during, and after his second visit to England, on the invitation of the Poet Laureate Robert Bridges. The topics Noguchi covers in these articles range from English and American literature, to Ukiyoe, Kabuki, Noh-play, Japanese art, his poetry, and his impressions and experiences in England. Drawing on these articles, this paper will shed light on how his visit to England reassured his poet-self.
著者
髙梨 一彦
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.97-105, 2017-03-31

パラメトリックな多変量の統計解析において用いられている(重)回帰分析や分散分析法等は、基本的な解析方法であると同時にコンピュータの利用が必須である。これらの方法は、従来、それぞれ別個の手法と考えられて教育上もそのように扱われてきている。しかしながら近年は理論的な枠組みも統一的かつ一般的になってきて、これらの方法をより一般性の高いものから考察しようという動きがある。それがGLM(General Linear Model;一般線型モデル)である。本研究では、GLMの理論的な枠組みを外国文献ならびに邦文文献によって、統計学上の理論をまとめ、統計パッケージソフトによる分析手順の違いを示した。
著者
池田 幸恭
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.65-74, 2017-03-31

日本では「すまない」などの負債感を含んだ複合的感情として感謝をとらえる傾向があるという文化的特徴に着目し、心理学や言語学の複数領域での研究成果に基づいて、感謝に伴って生じるすまなさ感情を経験することの心理的意味を明らかにすることを本研究の目的とした。そのため、「すまない」の語義、日本語の感謝表現における「すまない」、感謝と負債感の関係に関連する文献を概観した。それらの論考を踏まえて、以下の3つの試論を提起した。第1に、感謝は自分が周りから恩恵を受けていることを認識することによって、肯定的感情と否定的感情の両方として経験される可能性がある。そこでは、未分化で肯定的感情と複合したすまなさ感情を経験する場合、経験された否定的感情を解消するために他者へ返報する義務があることを強調して負債感を分化する場合があると考えられた。第2に、感謝に伴うすまなさ感情は、相手の負担、意図、与えられた恩恵の価値という状況の評価に加えて、相手との社会的関係の影響を受ける。さらに、感謝に伴うすまなさ感情は、他者との関係の形成や維持につながると考えられる。第3に、感謝に伴うすまなさ感情は、自己洞察を深めるが、同時に自己否定的な心理状態に留まるという危険性もある。今後の研究の展望として、対人関係以外の抽象的な対象への感謝に伴うすまなさ感情について検討すること、感謝の経験と表明の相違を検討すること、本研究で提起した試論について文化的背景を視野に入れた実証的研究をとおして確かめていくことの必要性について論じた。
著者
佐藤 勝明
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.174-163, 2017-03-31

俳諧史上の傑作の一つとして知られる『此ほとり一夜四歌仙』の中から、巻頭の「薄見つ」歌仙を取り上げ、各付合の分析を通して、蕪村連句の特色を探る。それぞれの付合は、①〔見込〕、②〔趣向〕、③〔句作〕の三段階による分析方法を使って読み解いていく。その結果として言えるのは、古典趣味や中国趣味など、題材の偏りが多分に見られること、前句をよく検討してから趣向を立てるのではなく、前句の詞や表現から喚起されたこと(それは自分たちの嗜好にかなう方向で多く選ばれる)をもとに付句を考えていくこと、の二点である。すなわち、芭蕉流の付合手法とは異なる面が多く、蕪村一流の美的世界が構築されているのであり、今後は、そのことを前提に蕪村連句と取り組むことが肝要と言える。
著者
大神 優子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.75-85, 2017-03-31

本研究の目的は、保育実習生の学習段階をはかる簡便な指標を作成するための基礎資料を得ることである。制限時間内にできるだけ多くの単語をあげる語想起課題の手法を用いて、保育環境課題(保育室・園庭)及び統制課題(動物・音韻カテゴリ(か))の計4課題を実施した。大神(2016)で実習前・見学実習後の2時点を比較した保育学生42人を責任実習後まで追跡し、3時点を縦断的に比較した。その結果、特に保育室課題で、実習後の反応数が増加していた。見学実習後と責任実習後では量的には差がなかったが、生成された語を「玩具」「生活用品」等のカテゴリに分けて分類したところ、各実習での特徴が明らかとなった。これらの生成カテゴリの違いは、実習段階の違いを反映したものと解釈された。さらに、実習生だけではなく、保育者までを対象として保育環境知識をはかる場合の課題及び分析手法の改善点について論じた。