著者
藤井 美男
出版者
九州大学経済学会
雑誌
経済学研究 (ISSN:0022975X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.119-155, 2013-03

本稿は、西欧中世における商業組織のあり方を(Wyffels, 1990, p.184)、南ネーデルラント地方のハンザ、とりわけロンドンのフランドル=ハンザLa Hanse flamande de Londres(以下、フランドル=ハンザと略称)と呼ばれる組織を主な対象として検討しようとするものである。フランドル=ハンザを選択する主な理由は、第1に、それが西欧でも最初期に形成された商業組織の1つであること(Van Werveke, 1953a, p.60)、第2に、ドイツ=ハンザDie Deutsche Hanseと同様、個別の都市商人ではなく複数都市の商人たちから成る組織であったこと、である。グライフたちの考究対象ともなったドイツ=ハンザと並ぶ時代の商業組織とその活動について、比較を念頭におきつつ詳らかにすることの意義は大きいと信じる。以下では、ハンザや商人ギルドといったヨーロッパ中近世の商業史に関して、まずその学説史、特に20世紀末から21世紀初頭にかけて注目を浴びるようになった新潮流を軸に概観する。次いで、南ネーデルラントの初期的ハンザを取り上げ、実証的な側面において何がしかの新知見を得ることで、そうした研究動向に対する一定の貢献可能性を探っていく。
著者
藤井 美男 川原 温 奥西 孝至 金尾 健美 花田 洋一郎 青谷 秀紀 中堀 博司 斎藤 絅子 畑奈 保美 加来 奈奈
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

「近代国家の形成」という西欧学界の現代的課題へ貢献することを目途として、中世後期のブルゴーニュ国家を素材に、社会・経済・文化諸領域の統合的な究明を図ることを本研究の目標とした。その結果を要約するならば、 (1)都市民の宗教・文化的存在形態が国家制度と宮廷文化へ及ぼす影響、(2)ブルゴーニュ国家の地域的統合、ネーデルラントの統一、および都市=農村関係の再構築の解明である。また経済史的側面からは、(3)国家財政における塩鉱山経営の位置づけ、および都市財政と国家財政との物的・人的結合の確認、(4)都市の政治機構と国家行政との関連の解明、という結論が得られた。