著者
青谷 秀紀
出版者
史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.69-102, 2015-01

中世後期のキリスト教世界では、信徒たちが、煉獄での滞在期間を可能な限り短くするため、様々な方法で贖宥を獲得しようとした。個人が限定された空間で想像のうちに聖地へと旅立つ仮想巡礼や、都市空間にエルサレムやローマの表象を重ね合わせることで都市を聖地化するプロセッションなどの集団的儀礼はその有力な手段であった。本稿では、内省的な宗教運動が広まりを見せると同時に、高度な都市化を経験した中世後期のネーデルラントを対象に、一見対照的とも思われる双方の実践が、ともに聖地の表象を喚起することで聖なる時間と空間を追体験し、救霊のための祈りを試みるという同質性を有していたことを明らかにしたい。そこからは、中世後期のキリスト教世界に特有な集団と個、公と私の関係性が浮かび上がってくるだろう。
著者
服部 良久 青谷 秀紀 朝治 啓三 小林 功 小山 啓子 櫻井 康人 渋谷 聡 図師 宣忠 高田 京比子 田中 俊之 轟木 広太郎 中村 敦子 中堀 博司 西岡 健司 根津 由喜夫 藤井 真生 皆川 卓 山田 雅彦 山辺 規子 渡邊 伸 高田 良太
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

23人の研究分担者が国内外の研究協力者と共に、中・近世ヨーロッパのほぼ全域にわたり、帝国、王国、領邦、都市と都市国家、地方(農村)共同体、教会組織における、紛争と紛争解決を重要な局面とするコミュニケーションのプロセスを、そうした領域・組織・政治体の統合・秩序と不可分の、あるいは相互関係にある事象として比較しつつ明らかにした。ここで扱ったコミュニケーションとは、紛争当事者の和解交渉から、君主宮廷や都市空間における儀礼的、象徴的な行為による合意形成やアイデンティティ形成など、様々なメディアを用いたインタラクティヴな行為を包括している。
著者
朝治 啓三 渡辺 節夫 加藤 玄 青谷 秀紀 西岡 健司 中村 敦子 轟木 広太郎 大谷 祥一 上田 耕造 横井川 雄介 花房 秀一 亀原 勝宏 小野 賢一
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

従来の一国完結史観で捉えたイングランドやフランスの王国史を乗り越え、13世紀西欧世界の権力構造の中での、アンジュー帝国の果たした役割を検証した。イングランド在住諸侯は共同体を結成し、イングランド国王としてのプランタジネット家と共同で王国統治を担う体制を構築した。フランスでは現地領主や都市が相互に抗争して共同体を結成し得ず、カペー家の王は侯、伯と個別に封建契約を結んで自衛した。王家は北仏のごく一部しか直接統治しなかった。プランタジネット、カペー両家はフランス、ブリテン島の諸侯の帰属を取り付けるために競合した。中世の「帝国」を、諸侯や都市の核権力への帰属心をキーワードに説明し得ることを実証した。
著者
藤井 美男 川原 温 奥西 孝至 金尾 健美 花田 洋一郎 青谷 秀紀 中堀 博司 斎藤 絅子 畑奈 保美 加来 奈奈
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

「近代国家の形成」という西欧学界の現代的課題へ貢献することを目途として、中世後期のブルゴーニュ国家を素材に、社会・経済・文化諸領域の統合的な究明を図ることを本研究の目標とした。その結果を要約するならば、 (1)都市民の宗教・文化的存在形態が国家制度と宮廷文化へ及ぼす影響、(2)ブルゴーニュ国家の地域的統合、ネーデルラントの統一、および都市=農村関係の再構築の解明である。また経済史的側面からは、(3)国家財政における塩鉱山経営の位置づけ、および都市財政と国家財政との物的・人的結合の確認、(4)都市の政治機構と国家行政との関連の解明、という結論が得られた。