著者
則内 友博 西 明 丸山 憲一 高澤 慎也 藤代 準
出版者
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.268-272, 2022 (Released:2022-09-09)
参考文献数
17

近年,新生児の周術期予防的抗菌薬の投与期間および手術部位感染(SSI)についての現状が欧米を中心に報告され,長期に及びやすい新生児への抗菌薬投与期間の短縮が図られている.一方,日本国内からの報告は少なく,現状は明らかではない.そこで本研究では,NICU・GCUの患児の抗菌薬の投与方法,SSI発症率などを調査した.対象は2017年から2020年の間に当院にて小児外科領域の手術を行った新生児,周術期にNICU・GCUに入院中であった患児とし,診療録の記載から後方視的に調査した.SSIの発症率は7.8%(8例/103例)で,欧米での既報と同程度であった.抗菌薬の投与期間の中央値は4日間で,SSI発症群と非発症群との間で投与期間に有意差はなかった.これらの結果からは周術期予防的抗菌薬の投与期間が長い可能性が示唆されたが,今後大規模研究で検証していく必要がある.
著者
藤代 準 堀 哲夫 金子 道夫 小室 広昭 楯川 幸弘 瓜田 泰久 工藤 寿美 星野 論子 神保 教広 坂元 直哉
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.226-230, 2011
参考文献数
13

直腸刺杭創は転落・転倒等により生じる稀な鈍的外傷であり,一般に深部の臓器損傷と体表創の程度が必ずしも一致しないため,受傷程度の評価が難しく,診断・治療に難渋することもある.われわれは腹膜翻転部の上下に2箇所の穿孔を生じた稀な直腸刺杭創の1例を経験したので報告する.症例は6歳女児で,ビニールプールで遊んでいた際水鉄砲の内筒が肛門に刺入した.出血が止まったので自宅で様子を見ていた.同日夜より腹痛・発熱を認めたため翌日前医受診,CT検査にて消化管穿孔と診断され,当科搬送となった.直腸刺杭創が原因と考え,同日緊急手術を施行した.腹膜翻転部直上の直腸前壁に2.5cmの穿孔を認め,穿孔部閉鎖,洗浄,人工肛門造設術を施行した.術後の直腸造影にて腹膜翻転部より肛門側に別の穿孔部を認めた.受傷後5か月で人工肛門閉鎖術を施行した.直腸刺杭創の治療の際には,術中に腹腔側から観察できない腹膜翻転部以下の下部直腸の精査が重要である.