著者
藤原 享和
出版者
同志社大学
雑誌
同志社国文学 (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
vol.73, pp.1-14, 2010-12

『万葉集』巻一五・三六八八番歌は、新羅への往路壱岐島で病死した遣新羅使(736年発遣)の一人雪連宅満を、「天皇の 遠の朝廷と 韓国に 渡る我が背」と詠う。白村江敗戦から70年以上を経、新羅が日本への朝貢外交を忌避しつつあった局面で、遣新羅使が敢えて「遠の朝廷」を使用した意識を考察。対新羅劣勢の中で逆に高まった新羅に対する強烈な支配意識の下に「都から遠方の天皇の支配地」の意で使用したと結論づけた。